「今日は疲れたから寝よう」「たりぃ、明日から本気を出すことにしよう」などなど、優柔不断や、なまけ心に悩まされ、行動に移せない人は少なくない。頭の中であれこれ考えていると、結局は何も動けなかったりする。すぐやる人は、ノートというツールを使い、思考の整理を行ったうえで、実行に移している。
今回、紹介するのは、『「すぐやる人」のノート術』(明日香出版社)。著者は塚本亮さん。偏差値30台の不良から、ケンブリッジ大学院まで進み、帰国後、京都で英会話スクールを設立する。1月上旬、版元である明日香出版社で、担当編集者・古川さん同席のもとインタビューを実施した。その様子をお伝えしたい。
A4一枚に書きなぐる
ノートの取り方には、100人100通りの方法がある。もし、ゼロリセットをしてノート術を学びたいなら試してもらいたい方法がある。塚本さんは次のように答える。
「私がオススメする方法はA4一枚真っ白な紙を用意して頭のなかにあるものを、心のなかにあることを何も考えずにひたすら書きなぐるということです。このときに、体裁や言葉のつながりを考える必要はありません。とにかくひたすら思った言葉を紙に吐き出していく、そんなイメージで取り組むといいでしょう。」(塚本さん)
「これ以上、出てこないというときに、その紙を見直して、情報をつなげたり消したりしながら整理していけばいいのです。文字を書いているうちに頭のなかが整理されていき、自分がいかに偏った考え方にとらわれていたのか気づくこともあります。」(同)
この作業はPCのテキストでも実行可能だが、集中して一気に書き出していくことが目的なので紙に書くことが望ましい。どのような書き方がいいのだろうか。
「A4の用紙を横にして、真ん中に、テーマを書いてください。あとは自由に書きたいところに書いていってください。つながりや体裁は一切気にせず書きましょう。中央に書くテーマは、疑問文であると脳にスイッチが入れやすくなります。テーマは基本的になんでもいいので、疑問文を書き出すことが大事です。」(塚本さん)
これは、思考・発想法の、「マインドマップ」や「メモリーツリー」に近いものとイメージしてもらいたい。頭の中で起こっていることを可視化した思考ツールになる。私たちは通常、「左脳」を使って作業している。「右脳」も一緒に使ったら、より効果的な学びができるのでは?と考えられたのがこの方法になる。
イメージを描くのに何種類もの色を使ったり、リラクゼーションした状態で脳を活性化させる。しかし、「マインドマップ」や「メモリーツリー」には厳密なルールが存在する。実際にやってみると簡単そうで難しい。塚本さんが紹介している方法は、これらを簡略化したものと考えてもらえればわかりやすい。
「そもそも」に戻って考える
さて、「べき論」をご存知だろうか。義務を果たすこと、理想を実現しなければならないことなどを強く主張する論調になる。「こうあるべき」「こうすべき」といった表現だ。しかし、一方的な思い込みによるものなので好ましくないとする意見もある。
「ノート作りの効能の1つは、私たちの凝り固まった考え方を崩すことにあります。これまでの経験や知識から『~すべき』『~することがあたり前だ』という思考癖を持っています。思考癖は何かを判断するうえでとても便利なものです。それによって必要のない考えや固定観念に縛られて、動けなくなってしまう原因にもなっています。」(塚本さん)
「私の場合、仕事とはこうあるべきだという思考に縛られていた時期がありました。それまでにうまくいっていたという成功体験から、『これはこうすべきだ』という思考が染みついてしまっていたのです。仕事が行き詰まってしまったときに、その原因を考えてみたの
ですが、それでもリカバリーすることは難しかったのです。」(同)
その後も、問題点を見つけ、解消しなければ前には進めないという焦りが生じてきたそうだ。そして、原因を探るために、A4一枚に書き出してみた。塚本さんは答える。
「表面的な部分ではなく『こうすべきだ』という根本にある思考が間違っていたことに気づきました。『そもそもそれでいいのか』と、当たり前だと思っていたことに問題があったのです。行き詰まって身動きがとれなくなったときこそ、深い部分にある考えを疑ってみること。書き出していくことで解消されていくことがあります。」(塚本さん)
「~すべき」は「~することが望ましい」とも変換できる。どちらを使用するかはあなた次第だ。ケンブリッジ大で、塚本さんは「すぐやる技術」を学んだ。そのベースは「ノートをつけること」だった。さて、筆者も1月に新しい本を上梓したので、関心のある方は手にとっていただきたい。ノートの取り方が上手くなるかも知れない。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)。
尾藤克之
コラムニスト