映画で、衣装が重要な役割を果たすのは周知の事実。今回は、映画とは切っても切れない関係の“衣”、特にファッション・デザイナーの話を少し。
ファッション・デザイナーのドキュメンタリー映画は定期的に作られる人気のジャンルで、2000年代以降で、ちょっと思い出しただけでも、こんな感じの作品があります。
「アルマーニ」(2000)
「ファッションを創る作る男 カール・ラガーフェルド」(2007)
「イヴ・サンローラン」(2010)
現在公開されているドイツ・ベルギー合作映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」は、ベルギー出身の世界的ファッションデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンを追ったドキュメンタリー。今も存命・現役の天才デザイナーへの遠慮からか、ドキュメンタリーとしての作りは平たんで、私には、さほど刺激的な作品とは思えなかったのですが、何しろ、今まで一切の密着取材を断ってきたドリスの、創作プロセスや、私生活までカメラに収めているのだから、ファンには必見の作品と言えるでしょう。映像は、ドリスの作品同様、カラフルでとても美しく、見ているだけでうっとり。中でも、創作に多大なインスピレーションを与えているという、邸宅の美しい庭をドリス自ら案内していくれるのは貴重な映像です。
ちなみにファッション業界を描いた劇映画では、パリ・コレを舞台にした群像劇「プレタポルテ」(1994)、有名ファッション誌の舞台裏をコミカルに活写した「プラダを着た悪魔」(2006)などが有名です。最近の作品では、美を競うファッションモデルの狂気を描いた異色作「ネオン・デーモン」(2016)あたりもおすすめでしょうか。
また、トム・フォードのように一流のファッション・デザイナーが、「シングルマン」「ノクターナル・アニマルズ」などの秀作を作って、映画監督としても本業に勝るとも劣らない腕前を見せる例も。
やっぱりファッションと映画は不可分の関係。どうやら、天は二物(以上?)を与えたようです。
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年1月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。