「充分にリスクを検証したのか?」「ハァ?即断即決。それは愚の骨頂だよ」「たりぃ。明日から本気を出すことにしよう」などなど、優柔不断や、なまけ心に悩まされ、行動に移せない人は少なくない。探せば「やらない理由」「できない理由」はたくさん見つけることができる。しかし、そんなことではいざという時に行動することは難しい。
今回、紹介するのは、『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)。現在、12万部を突破したベストセラーである。著者は塚本亮さん。偏差値30台の不良から、ケンブリッジ大学院まで進み、帰国後、京都で英会話スクールを設立する。1月上旬、版元である明日香出版社で、担当編集者・古川さん同席のもとインタビューを実施した。
アップデートの重要性を理解する
私たちは変化の激しい時代を生きている。これは、同じやり方では、すぐに通用しなくなることを意味している。思考を柔軟にしなくては対応できない。
「私は学生と接する機会が多いのですが、かつてないほど英語力が高い学生が多いことに驚かされます。英語力の高い学生の多くは就職活動で英語力の高さを武器だとアピールしようとし、TOEICなどの試験のスコアをもっと伸ばそうとします。しかし、企業がグローバル人材に求めているのは、語学力やTOEICのスコアではありません。」(塚本さん)
「経団連の『グローバル人材の育成·活用に向けて求められる取り組みに関するアンケート』によれば、『海外との社会、文化、価値観の差に興味·関心を持ち、柔軟に対応する姿勢』『既成概念に捉われずチャレンジ精神を持ち続ける姿勢』、そして『語学力』なのです。以前ほど英語力の高さをアピールしても効果はなくなっています。」(同)
塚本さんは、「英語力は必要ない」と言っているのではない。高い英語力を保持していても武器に成りうる保障がないこと、そしてアップデートの必要性を示唆している。
「優れた知識や情報、技能を持っていたとしても、それはあっという間に時遅れになるということです。ましてや、よりスキルの高い人はもちろん、人工知能などのイノベーションが台頭するなか、スキルというものは、他の『誰か』や『何か』によって代替されるリスクが常につきまとっているわけです。」(塚本さん)
「チャールズ・ダーウィンは、『この世に生き残る生物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ』という考えを示したと言われています。毎日見ている景色は氷山の一角でしかなくて、私たちの目が届かない水面下でたくさん進行しているからです。」(同)
自分の中の常識を捨てるべきだ
これまでの常識に捉われていては時代に置いていかれる。だから、「すぐやる人」は常に自分をアップデートすることを怠らないと、塚本さんは指摘する。一方で「やれない人」は現状に満足してしまって、変化する社会を嘆くのだそうだ。現状の自分に固執してしまう。こうなるとアップデートは難しい。
「『すぐやる人』は常にアップデートするために、とりあえず試してみて、まず一次情報に触れることにこだわります。フットワークを軽くして自分が体験するのです。流行りのものはなぜ流行っているのかを考えてみます。人はどのようなことを日々感じ、考えているのか、どのようなことに不満を抱えているのかを知ろうとします。」(塚本さん)
「また、私は、異業種の人はもちろん、様々な年代や職種の人たちと交流することを楽しんでいます。学生や親の年代以上の人とまで幅広く接しています。」(同)
年代や職業が異なるということは、通常のときよりも伝え方に工夫が必要だったり、話をすんなりと理解できないことがあるかも知れない。根本的に、考え方が異なることもあるだろう。しかし、最初から、交流することを拒み、「オレの若い頃はな~最近の若者はけしからん」と、その違いを憂いていても何も学ぶことはできない。
「なぜそうなるのか、どういう背景があるのかに考えを巡らせてみるのです。すると、自分にとっての当たり前は、あくまでも自分のものでしかなくて、それぞれ違った価値観があることに気が付きます。学ぶことは本来楽しいものです。だから、『すぐやる人』は絶えず学び、自分をアップデートすることで、生きる喜びを感じています。」(塚本さん)
ケンブリッジ大で、塚本さんは自分の生き方が世界では当たり前であることに気がついた。それは、「すぐやる人」と「やれない人」の習慣だった。自らを振り返りたい人にとって最適な一冊といえるだろう。さて、筆者も1月に新しい本を上梓した。ご関心のある方は手にとっていただきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)。「すぐやる」ことでなんらかのメリットを得られるかも知れない。
尾藤克之
コラムニスト