確定申告の時期が近づいてきました。
中小企業の経営者や個人事業主にとって一番悩ましいのが「経費計上」ではないでしょうか?
「ウチは税理士に一任している」という社長さんがいるかもしれませんが、経費についてはご自身でしっかり確認しておくべきです。
税務調査で指摘ゼロの税理士は「悪徳税理士」、経費で交渉するのが「善良税理士」と巷でよく言われます。「悪徳税理士」は、本来経費計上できるものまで経費参入せず、必要以上に過大な税金を顧問先企業に支払させています。
税務調査でも楽ができるし(実情を知らない)経営者には感謝されます。
一方、「善良税理士」は経費算入の可否について税務署と交渉します。
「この会社の業務に不可欠のものである」と勇猛果敢に交渉し、多少なりともお土産を差し出しても会社のトータルの納税額は少ないのです。
全てがそうではないにしろ、このような傾向は確かにあります。
弁護士広告が規制されていた時代、ロータリークラブの会費を経費とは認めないという税理士さんと意見が対立したことがあります。
経費についてふと考えたことは、売上の一定割合を無条件で経費として認めれば、個人消費が増加するのではないかということです。
もちろん、業種業態によって差をつける必要はあります。
例えばある業種で、5000万円の売り上げに対して2500万円を経費枠とし、実際に支出すれば無条件で経費算入を認めるのです。
個人の場合、実効最高税率は55%(国税45%、地方税10%)で、法人の実効税率は29.97%です(数字は変わっているかもしれません)。
個人の場合は経費として使わないと半額以上が税金にもっていかれます。
逆に言えば、経費として消費等すれば、実質半額以下で物が買えたり飲食ができることになります。
先の例で、2500万円を全額経費として認めれば、多くの個人や企業は限度額の目一杯まで消費等に充てるようになるでしょう。
実際の経費でもないのに「経費」と認めるのは無謀だと考える方が多いと思います。
しかし、医師や歯科医師には次のような優遇税制が認められているのです。
例えば、社会保険診療報酬金額が2500万円以下の医師は(実際に使おうが使うまいが)72%を経費として認められるのです(概算経費)。4000万円超5000万円以下の場合は、57%プラス490万円が概算経費として自動的に経費処理できます。
これが悪名高き「医師優遇税制」というもので、実際に使わなくても経費処理して納税額を圧縮することができるのです。このような制度と比べれば、実際にお金を使えば一定割合で無条件で経費処理できるという制度の方がよほど公平です。
自家用車を買おうが家族で飲食しようが、消費喚起になれば「良し」と割り切るのです。医師優遇税制と違って、現実にキャッシュ出ていく訳ですから。
また、現在、10万円以上の資産を買うと減価償却を義務付けられています(30万円未満の特例はありますが)。かつて20万円未満だったものが突然10万円未満に変更されたとき、顧問先の社長が怒り狂っていました。
「これじゃあ安価なパソコンも一括経費処理ができない。こんな重大な変更を大々的に議論することなくさっさと決めてしまうのは横暴だ」と。
個人事業主や中小企業は業績に大きな波があります。大きな仕事が入れば大きな黒字になるけど、それ以外は赤字と黒字の間を行き来したりというケースが多々あるのです。とりわけ、芸能事務所のようなアタリハズレ業界はアップダウンが大きいと聞いています。
大きな仕事が入って売り上げがグンと伸びた時に、たくさんの経費を使って備品を揃えたり接待をして納税額を抑え、厳しい時期に備えようとするのです。生活必需品も買っておかないと、翌年以降は買うお金がなくなってしまうこともあります。
このような行動様式に鑑みれば、業種ごとに(無条件の)経費算入割合を認めることは購買意欲を喚起して消費の拡大につながり、税務調査にかかる手間暇も省けます。キャッシュが出ていかなくても一定割合を自動的に経費処理できる「医師優遇税制」よりも、はるかに公平で効果的な制度だと思うのですが…。
なお、私は税務の専門家ではないので、本稿には大きな間違いがあるやもしれません。
専門家の方々の建設的なご意見をいただければ幸いです。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。