安倍首相の施政方針演説では「アベノミクス」という言葉は1回しか出なかった。かつて主役だった金融政策は演説から消え、首相は「生産性革命」や「人づくり革命」などの「革命」を連発し、明治維新のエピソードを引用した。
政権の最高指導者が「革命」を呼びかけるのは奇妙だが、これは彼の重点が短期的な景気対策から長期的な構造改革に移ったことを示している。日本経済の停滞が金融政策で解決するような単純な問題ではないことが分かったのは一歩前進だが、それは「革命」で一挙に解決するのだろうか。
成長する世界で停滞する日本
安倍政権の5年余りで景気は回復したが、日本経済は長期停滞を脱却できない。企業収益は上がり、雇用は改善したが、賃金は上がらない。IMF(国際通貨基金)は世界経済見通しで、2018年の世界成長率の予想を3.7%に引き上げ、アメリカの成長率を2.7%と予想したが、日本は1.2%だ。これはEU(ヨーロッパ連合)平均の2.2%よりはるかに低い。
日本の成長率は、2000年代からずっと先進国(G7諸国)で最低水準だ。その原因は「デフレ」ではなく、潜在成長率が下がっていることだ。これは労働人口や資本蓄積などで決まる経済の実力なので、長期的には潜在成長率を超えて成長を続けることはできない。
日銀によると、2017年の潜在成長率は0.8%前後で、現実の成長率はこれをやや上回っているが、長期的にはそれに近づいてゆくだろう(図1)。IMFも2019年の日本の成長率を0.9%と予想している。