コインチェックの463億円返金補償対応で感じた「2つのこと」

内藤 忍

大手仮想通貨取引所コインチェックが不正アクセスされ、預かっていた仮想通貨ネム(NEM)が5億2300万XEM(流出時の日本円換算で約580億円)相当流出した事件に関し、同社は保有者に対し、円で返金すると昨日深夜に発表(画像は同社ホームページから)しました。

対象となるのが約26万人の顧客の5億2300万XEMで、 売買停止時からプレスリリースまでの加重平均価格88.549円を根拠に、保有数を掛けた金額を日本円で支払うということです。総額は約463億円になります。プレスリリース発表後は、マーケットが内容を好感し、ネム以外の仮想通貨も全面的に上昇しました。

今回の事件は、後々まで記憶に残る仮想通貨の黎明期のシンボリックな出来事になると思いますが、私が昨日の発表から感じたのは次の2つのことです。

1つは、仮想通貨取引所のリスクです。

他の金融商品のように取引所の口座に大量の資産を置いておくことは現実的ではないということです。例えば、株式や投資信託の取引に使うネット証券の場合、資産の出金は原則として登録してある自分自身の銀行口座だけしかできません。万が一不正アクセスされたとしても、外部に資産を送金することが極めて難しいのです。

コインチェックやビットフライヤーといった大手取引所であっても、大量の仮想通貨を保有したままにしておくのはやめるべきです。ネットと遮断された場所に、自己責任で管理するしかありません。私はアマゾンでこれを購入して、大半の保有分をネットから遮断して保管しています。今後、品薄になる可能性があるので、この手のデバイスを早めに手に入れておいた方が良いと思います。

また、仮想通貨のセキュリティ管理については2月8日にセミナーを開催します。計らずもタイムリーな開催になってしまいましたが、仮想通貨を安心して取引できる方法について、税金と合わせて専門家の意見を聞いてみたいと思います。

もう1つは仮想通貨取引所の高い収益性です。

コインチェックからのお知らせには「返金原資については自己資金より実施させていただきます。」と書かれています。数百億円と言う巨額の返済金を第三者のサポートではなく、自社の資産から支払うことができたとすれば、設立数年のベンチャー企業としては驚きです。

コインチェックの補償原資は、自社で購入し保有している仮想通貨の高騰による巨額の含み益と思われます。また、仮想通貨取引の取引量が大きく膨らみ、アルトコインでは6%と言われる厚い売買手数料から、短期間に極めて大きな利益を得ている可能性も高いのです。

今後、このような高い収益性を見込んで大手が仮想通貨取引所ビジネスに参入してきますが、今回の件でコインチェックの知名度が一気に向上し、セキュリティーなどの信頼が回復すれば「災い転じて福となす」になる可能性もあります。

仮想通貨がまだ発展途上にあり、多くの人の理解が現実についていけていない中、今回の件を敢えてポジティブに捉えるとすれば「良い勉強の機会になった」ということです。

私自身もコインチェックに口座を持ち、ある程度まとまった資産を置いてあります。リスク管理に関し、さらに厳格な対応をするつもりです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。