国際社会では国連安全保障理事会の常任理事国5カ国だけに核保有が認められ、それ以外国の核保有はNPT(核拡散防止条約)によって禁止されている。しかし、インド、パキスタン、イスラエルは既に核保有国家であり、北朝鮮も事実上の核保有国である。米国務省は北朝鮮を核保有国と認定はしていないが、米国防総省は核保有国として受け止めているというのが事実である。言わば、「ダブルスタンダード外交」路線である。
北朝鮮は「インド、パキスタン、イスラエルは核を持っているのに、なぜ、北朝鮮だけ核保有を禁止するのか」と猛反発しながら、核保有に必死になっている。一見すれば理屈があるように見える。しかし、北朝鮮が核保有国として認められた場合は、日本と韓国、台湾も核開発に踏み切る名分が発生する。中国が一番怖いのは日本の核武装である。さらに、韓国と台湾の核武装も中国には大きな脅威となりかねない。
日本の核武装は中国だけではなくアメリカにも潜在的な脅威になる可能性がある。だからこそ、米国は韓半島の非核化に前向きであり、中国とロシアも了解していると考えられる。
トランプ大統領は選挙運動の過程で、日本と韓国の核兵器保有を容認する可能性に言及したことがある。それが、図らずも現実味を帯び始めた。北朝鮮の核問題解決の選択肢として一番望ましいのは朝鮮半島の非核化である。しかしながら、万が一、北朝鮮の核保有が暗黙の了解で認められた場合は、日本、韓国、台湾も核保有に踏み切る可能性がある。
そうなると、勢力均衡が発生して、逆の意味で地域平和の安保環境が生まれるかもしれない。言わば、冷戦時代に世界大戦の発生を止めた「恐怖の均衡」の抑止力が発生するわけだ。
しかし、北朝鮮の核開発はインドやパキスタン、イスラエルとは違って、明示的に米国に挑戦する形で進められている。
それが最終的に容認されれば、米国中心の国際社会の核秩序に大きな風穴が開くことになり、テロ組織を含めた無限核競争につながりかねない。
今年は、北朝鮮の核・ミサイル問題がどういう形で処理されるか山場を迎える。当事国・関係国が賢明な解決に向け知恵を絞らざるを得ない重大な局面に直面している。
(拓殖大学客員研究員、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官・専門委員)
*本稿は筆者が1月30日の「世界日報」に掲載したコラムを加筆したものです。