日銀が長期金利上昇を抑制する意味があるのか

2月1日の米国市場では、FOMCの声明を受けて利上げペースが速まるとの見方が強まったことに加え、国債発行額が増加するとの観測も手伝って、米債は大きく売られた。米10年債利回りは2.79%と前日の2.70%から大きく上昇し、2014年4月4日以来の水準をつけた。また、30年債利回りは昨年5月以来の3%台回復となった。

米財務省が発表した四半期ペースの国債発行計画によると、2~4月に入札による米国債の発行額を計420億ドル増加させる。これはFRBの資産買い入れプログラム縮小に伴っての国債の入札規模拡大ともなる。この際に、据え置くとみられていた10年債も月10億ドルずつの増額となることで、これも米債の売り要因となっていたようである。

2日には米雇用統計を受けて米10年債利回りは2.84%まで上昇しており、米10年債利回りのチャートからは3%に向けて順調に上昇しつつあるようにも見える。まだ米10年債利回りが3%に上昇するとの見方は少ないかもしれないが、むしろ通過点となる可能性も出てきた。

この米10年債利回り、つまり米長期金利の上昇の背景にあるのが、世界的な景気拡大にともなう米景気の拡大である。それも背景に、FRBが進める正常化への動きも今後加速されるとの見方も出てきている。

FRBのイエレン議長は3日に退任する。そのあとはパウエル理事が引き継ぐ。実務派とされ、エコノミストではないパウエル理事は、実体経済に沿った政策を行うとみられているだけに、これも利上げ加速観測の背景にある。

この米債安もあって2月2日の日銀の対応が注目された。米債の下落などを受けて、日本の10年債利回りが0.1%に接近していたためである。日銀は10時10分に予定通り国債買入をオファーしたが、この際に5年超10年以下4500億円に増額した。前回29日は4100億円であり、400億円の増額となる。

それとともに固定利回り方式による国債買入もオファーした。対象は残存期間5年超10年以下で固定利回較差は0.020%となり、この結果、10年利付国債349回の買入利回りは0.110%となる。これは買入金額に制限を設けない買入、つまり「指し値オペ」となる。0.11%というのは昨年2月と7月に実施された水準でもある。

2日の10年債利回りの上昇は米債安にも関わらず0.095%までとなり、この日銀の指し値オペ等の可能性もあったことで0.1%には買いが控えていた。つまり0.11%どころか0.1%もつけておらず、日銀は空砲というか威嚇射撃を行ったともいえる(実際に応札額はゼロ)。0.110%を上回っていなければ、業者は指し値オペに応ずる必要はない。ただし、日銀としてはここからの長期金利の上昇は容認しないとの姿勢を見せたものとみられる。

しかし、今回はこれで長期金利の上昇が抑制できるかは疑問である。米国に限らず欧州の国債利回りも上昇している。欧米の物価もいまのところ抑制されているとはいうものの、原油価格は上昇基調となっており、これが物価に反映されてくることも予想される。日本の景気についても10~12月期のGDPが約30年ぶりとなる8期連続のプラス成長予想となるなど、日銀が無理矢理長期金利を押さえ込む必然性が薄れつつある。実体経済に即した金利形成も必要であろう。

日銀としては2%の物価目標を掲げ、紆余曲折しながら長短金利操作付き量的・質的緩和政策という政策にたどり着いてしまった手前、長期金利の目標水準の引き上げはなかなか容認できない面もあろう。しかし、それを果たして市場が許すのか。そもそも金利という我々の収入を制限してまでそれを行う意味が果たしてあるのか。今後、市場との攻防戦が繰り広げられる可能性もありうる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。