ドッペルゲンガーものあれこれ

映画で時々登場するドッペルゲンガー。ドイツ語で、分身、複体、ダブルを意味する言葉で、日本語では自己像幻視と訳されています。自分自身の姿、あるいは自分とそっくりの姿をした分身を見る幻覚の現象で、第2の自我との解釈もあるそう。

ドッペルゲンガーを題材にした映画には、

オムニバス映画「世にも怪奇な物語」(1967)の第2話「影を殺した男」
黒沢清監督の「ドッペルゲンガー」(2002)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「複製された男」(2013)

などがあります。

「世の中には自分とそっくりな人間が3人いる」、「自分の生き写しを見たら、その後に死ぬ」。ドッペルゲンガー現象には、いくつかの謎めいた恐ろしい言い伝えがあるためか、ホラーやサスペンス、ミステリーとして描かれることが多いモチーフです。そっくりな“人間”ではないのですが、オスカー・ワイルドの小説で何度か映画化された「ドリアン・グレイの肖像」も、ドッペルゲンガーものの一種と考えていいでしょう。

そんなちょっとコワいドッペルゲンガーですが、現在公開中の映画「風の色」は、この題材を不思議なラブストーリーとして描いた異色の恋愛映画です。日本・韓国合作の本作は、出演俳優は日本人、メガホンを取るのは韓国のクァク・ジェヨン監督。「猟奇的な彼女」や「僕の彼女はサイボーグ」などで日本でも人気のこの監督は、ドッペルゲンガーにマジック(手品)を組み合わせて、風変わりな物語を作り上げました。正直、ご都合主義や突飛な展開もあるのですが、2組の男女が紡ぐファンタジックなストーリーを、こんな語り口で描けるのは、ジェヨン監督ならでは。流氷の北海道の雪景色や、桜が舞い散る東京の風景など、映像センスの良さも見所です。

もし、別次元にこの世界と同じ世界が存在し、そこに自分とまったく同じ人間が生きていたら? 時空を超えて再び出会う恋人たちの物語で、ロマンチックな気分にひたるのもいいかもしれません (*^.^*)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年2月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。