前回ご案内のように陸自のUH-Xは調達単価が12億円を想定したのですが、20億ぐらいになりそうで担当者、メーカーとも頭を抱えている状態らしいです。そうであれば、調達単価は1.67倍になります。
まあ、空自のUH-Xでも23.75億円でできます、といって落札したら実態はその倍ぐらい。
で、当時の空幕長は「劇的に値段が下がる方策はありません、努力します」ですからね。
これは官製談合を疑われて然るべきです。言うまでも無いですが官製談合は犯罪です。
空自は組織的な犯罪を疑われても仕方が無い。
この件に関しては、会計検査院はきっちりと調べるべきです。
こういうことがあるので陸に限った話では無い。
ですが、空自の時と違って現在では装備調達で調達単価が著しく高騰した場合、調達を見直すという仕組みができております。
(参考)プロジェクト管理における事業見直し基準(P15)
これは米国の国防授権法(ナン=マッカーシー条項)をモデルに作られていますが、米国のそれと比べてかなり緩くなっています。
それでも、政治、財務省、会計検査院などの指摘によって、UH-Xが中止に追い込まれることは十分にあり得ます。
スバルはそのUH-Xの武装型をAH-Xに提案するらしいですが、この価格では画餅でしょう。
しかも同社には武装化に際してFCSやインテグレーションの技術もない。高々30機ほどであろうAH-Xで開発すれば割だけになるだけです。
そもそも陸自も悪い。カネが無いから既存ヘリの改修型でいい。で、安ければ安い方がいいと。
極論言えばドアガン積む程度でいいといっているらしい。ならばわざわざAH-Xなんて立ち上げる必要はないでしょう。
問題があるのは攻撃ヘリ、汎用ヘリだけではありません。
そしてOH-1は2年以上も全機飛行停止、部隊としては全滅状態です。
現在2機が改修したエンジンを搭載して試験飛行をしていますが、それが終わって順次改修をしても、9年は掛かるそうです。つまりOH-1の導入は失敗です。そしてOH-1で置き換えるはずのOH-6も用途廃止が進んでいます。
そうであれば偵察ヘリの調達こそ優先順位が高いのではないでしょうか。
仮に陸幕が安価な武装ヘリを望むのであれば、武装キットが既に存在する偵察ヘリベースにする方が、UH-XやUH-60などの武装化よりも調達コストも運用コストも遙かに安価です。
■本日の市ヶ谷の噂■
北海道庁の防災ヘリ調達で、ベルのB412がシングルテンダーで、想定予算が25億円なるも、ベルが採算的に難しいとのことで、入札を辞退し、であればUH-Xの調達単価も危ういとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。