皆さん、それぞれに憲法9条改正試案を作成されてみては

自民党憲法改正推進本部サイトより(中央が細田本部長:編集部)

自民党の国会議員に対してだけの要請だが、自民党の細田さんが面白い注文を出された。

「憲法9条の改正案について、皆さんのお考えを条文の形にしてお示しいただきたい。」

実に官僚出身者らしい手堅い手法である。
国会議員は、皆さん、それなりに議論は達者だが、細部の詰めが甘いところがあり、議論を聞いている限りではそれぞれそれなりの説得力があるのだが、いざ条文に表してみるとあちらこちらに穴が開いていることがある。

官僚出身の国会議員の方々は、自分の所属する省庁の部内に留まらず、内閣法制局や財務当局や他の省庁との折衝や、自民党や公明党、時には野党の政策担当者との協議を通じて法律案や政省令案策定の技術を学んでおられる方が多く、そうでない方々と比較すると一歩先を行っていることが多い。

細田さんの手法は、実に手堅い。
さすがに通産省(現在の経済産業省)出身の元官僚のことはある。

提出の期限がいつなのか分からないが、3月の自民党の党大会までには十分間に合うようなスケジュールで検討を進められるのだろうから、関心のある方々は是非いい案を提出していただきたいものだ。

昨年希望の党の公認で衆議院選挙に立候補して惜しくも落選された外務省出身の元官僚・前衆議院議員の緒方林太郎氏が、早速ご自分の私案を提示された

私の目から見てもなかなか優れた案のように映る。
ブロゴスに緒方林太郎氏の一文が転載されている。
詳細はブロゴスを読んでいただきたいが、面白いのは、緒方林太郎氏の記事に寄せられたコメントである。

実に的確な指摘をされている方が多い。
特に私の目を引いたコメントは、次の一文である。

確かに緒方氏の修正案では「外部からの武力攻撃が発生する明白な危険」としており、このほうがあいまいさが少ないので優れているように思う。

しかし、武力攻撃事態関連法の記述からすると「存立が脅かされる明白な危険」としておいたほうが法律との整合性はとれるのではないか。

つまり、阪田私案のままでよい。

本来、阪田私案に自民党が反対する理由はないはずなんだけどねえ。

【憲法9条改正の阪田私案】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

3 前項の規定は、自衛のための必要最小限度の実力組織の保持を妨げるものではない。

4 前項の実力組織は、国が武力による攻撃をうけたときに、これを排除するために必要な最小限度のものに限り、武力行使をすることができる。

5 前項の規定にかかわらず、第三項の実力組織は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限度の武力行使をすることができる。

【緒方修正第5項案】
5 前項の規定にかかわらず、第三項の実力組織は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限度の武力行使をすることができる。

お主、出来るの~、というところである。

もっとも、私は、阪田案の第4項、第5項ないし緒方修正案の第5項は、憲法改正案の付則にでも書き込めばいいんじゃない?ともう一段軽くした方がいいんじゃないかと考えているのだが・・・。

さて、皆さんのお考えは如何だろうか。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。