喫煙者が吸う煙を主流煙、周りの人が吸う煙を副流煙と言いますが、有害物質は副流煙が主流煙の3倍以上になります。
その結果、受動喫煙が理由で毎年1万5000人が亡くなっているという研究結果が出ています。
そして、約3000億円の医療費が、我々の税金から余計に支払われています。
こうした受動喫煙の害を食い止めるべく、厚労省は受動喫煙防止法を成立させようとしており、この1月30日、法案骨子を発表しました。
150平方メートル超は原則禁煙 加熱式たばこも規制へ 受動喫煙対策で厚労省が健康増進法改正案骨子を公表 – 産経ニュース
それがなんと、これまで掲げていた厚労省案よりも大幅に後退してしまったのです。
屋内禁煙から、ほぼ喫煙可能に
そもそも、当初は「原則屋内禁煙」でした。
しかし、飲食店や自民党たばこ議連が強く抵抗。昨年3月の改正案では、延べ面積30平米以下のバーやスナックでは認める、ということに後退。
今回の案では、さらに後退し、「既存の小規模店」は「喫煙」や「分煙」の表示をしさえすれば当面の間は喫煙を認める、という内容。
では「既存の小規模店」というのは、どの範囲か、というと「150平方メートル以下」の店にしようということに。
東京都では約9割の飲食店が「150平方メートル以下」なので、ほぼ全ての飲食店で、喫煙可能、というトンデモない状況になってしまうことになります。
世界に一つだけの「吸い放題オリンピック」に
よく知られることではありますが、WHOとICO(国際オリンピック委員会)は、「スモークフリー(たばこのない)オリンピック」を推進していることで合意しています。
前回のリオ・オリンピックでも、その前のロンドン・オリンピックに際しても、法律でレストランやバーなども含む一般の飲食店での屋内禁煙を決めました。
平昌オリンピックをしている韓国でも、リオやロンドンよりはやや緩いですが、屋内禁煙の法律がすでに施行されています。
つまり世界のオリンピック開催国では日本だけ遅れている、という状況なのです。
東京都もトーンダウンか
一方、東京都は独自の条例で、受動喫煙を規制しようとしていますが、国がここまで骨抜きな法案を出してくると、国に引っ張られてしまう可能性が高まってきます。
現に東京都は、2月に提出予定だった条例案を先延ばしにしています。
つまり、このままだと、オリンピックはタバコの煙溢れる中で行われることになり、近年、世界で唯一スモークフリーを達成できなかったオリンピックとして歴史に名を刻むことになるでしょう
党議拘束を外せ
この状況を変えていくために必要なのは、たばこ利権を代表する「自民党たばこ議連」だけでなく、自民党内の受動喫煙反対派たちが立ち上がることです。
山東昭子議員が率いる「自民党受動喫煙防止議連」は、原則屋内禁煙を決議しました。自民党内でも、国民の命を守ろう、という議員はいるのです。
しかし、今の仕組みだと「党議拘束」と言って、「党内で賛成と決まったら、どう思っていようが賛成票を投じてね」ということになっています。
しかし、よく考えるとこの仕組みはおかしい。国会議員一人一人が国民の代表で、異なる人たちを代表していて、異なる意見を持っているにも関わらず、強制的に1つの意見にしろ、というのはあまりにも乱暴です。
自民党内でほとんど異論がないのならともかく、意見が割れているのであれば、党議拘束を外して、それぞれの議員の良心に委ねられるべきでしょう。
このまま人命が失われ、血税が余計な医療費に使われ、オリンピックの大舞台で世界に恥を晒すかどうかは、今このタイミングの意思決定にかかっているのです。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年2月15日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。