プロに聞いた!あがりの直し方は失敗恐れず挑戦すること

尾藤 克之
書籍画像より

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「第一印象がマイナス評価だ」「自分の気持ちを上手に伝えられない」「大勢の前だとあがってしまう」「人と思うようにコミュニケーションがとれない」「会議で発表する機会を活かしきれていない」「上司に説得力ある説明で認められたい」。そんな悩みを抱える方は少なくない。この原因は「声と言葉の使い方」にある。

今回紹介するのは『声と言葉のプロが教える伝わる話し方』(秀和システム)。著者は、のざききいこさん。CM、番組ナレーション、アニメ、洋画の吹き替えなど声の世界に携わっている。主な実績に、「ドン・チャック物語」のララ役、NHK「着信御礼!ケータイ大喜利」、皆さまお馴染み「おふろが沸きました」の音声ガイダンスなど幅広い。

あがって命を落とした人はいない

あなたはこんな経験をしたことがないだろうか。「部下の結婚式にスピーチを頼まれた。社内の人間ばかりではなく、取引先の皆さんも出席するらしい。会社の代表として、みっともないスピーチはできない!」「来週はプレゼンだ。長い期間チームが取り組んできた成果を発表する。失敗したら、チームのメンバーに申し訳ない!」。

「人前で話すとなると、多くの人が気になるのが、あがってしまい失敗したらどうしようという心配です。そもそも、なぜあがるのかを考えてみましょう。誰もが体験する経験不足や苦手意識、内気な性格だから人前で話すなんてとんでもないというプレッシャー、突然の指名で用意ができていない準備不足など原因は様々です。」(のざきさん)

「私のあがりデビューは、5歳の盆踊りです。日本舞踊の発表会で初めてやぐらの上で踊ることになったのです。やぐらといえども、5歳の子どもにとってはスカイツリーのてっぺんに立った気分でした。一瞬真っ白になり、金縛り状態になりました。」(同)

ちなみに、筆者のあがりデビューは小学校の徒競走だった。練習していたので自信があった。スタートラインについても集中している。しかし気がついたらレースは終わっていた。周囲の雑音でピストルが聞こえなかったのである。とても惨めな気持ちになった。

「多くの人のあがり方も見てきて実感することがあります。それは、誰でもあがるということです。大御所のアナウンサーの方でも、新人時代にはミスをしているものです。紅白歌合戦のトリを務めるベテラン歌手が、あがっているのを目にします。その道のプロとして活躍している超ベテランの歌手でもあがるのです。」(のざきさん)

「練習では完璧なスポーツ選手が、オリンピックでは、普段どおりの結果を残せないことがあります。プロのアスリートでもあがるのですから、プロでない人があがるのは当然です。たくさんあがって、失敗をして身につくこともあります。」(同)

あがりを抑える処方箋

ここで、あがりにくくなる方法を紹介したい。私がコンサルティング会社に勤務しているとき、プレゼンスキル向上の重要テクとして考えられていた内容に近い。

「本番前、周囲に期待されていればいるほど、プレッシャーがかかるものです。手がふるえ、足はガクガク。口はカラカラ、心臓がドキドキします。でも、大丈夫、どんなにあがっても命を落とすわけではありません。心臓がドキドキしているのは、まだ生きている証拠です。まずは、大きく、ゆったりと深呼吸をしましょう。」(のざきさん)

「なんだ、深呼吸かと思うかもしれませんが、深呼吸は、気付け薬そのものです。身体と心はつながっています深呼吸で身体をリラックスさせることで、心も落ち着きます。心を平静にさせ、心の中のプレッシャーを追い出すことができます。」(同)

では、途中であがりを抑えるにはどうすればいいのだろうか。

「水を飲むなどして、気持ちを落ち着かせましょう。喉の渇きというよりも、この水を飲む時間の中で気持ちを落ち着かせます。慌てずに、ゆっくりと水を飲みましょう。ホワイトボードを利用することで、対面から視線を変え、ホワイトボードに向かい、なんでもいいから書き込むのもいいでしょう。」(のざきさん)

「気持ちを落ち着かせたい場合は、自分ではゆっくりすぎると思うほど、ゆっくり話すといいでしょう。あがると早口になりがちです。不安と焦燥感で気持ちが追い立てられてしまいます。そんなときこそ、ゆっくり話すことを心がけることが大事です。」(同)

さて、筆者も、新刊を上梓したので関心のある方は手にとってもらいたい。あがりを直す練習の合間にいかがだろうか。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト