「歴史的一戦」に立ち会って思う:平昌視察報告

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

歴史的一線を観戦

昨日は平昌オリンピック・アイスホッケー女子の日本代表と南北合同チームの一線を現地で観戦してきました。そもそもは観戦予定はなかったのですが、北朝鮮の参戦が決定し様々な確認事項が必要だと今回共に平昌オリンピックに向かった高島都議、吉原都議、山崎都議にもご理解を頂き、この時間をホッケーに当てました。

一番の確認事項はセキュリティ

私が確認すべきと思ったのは何よりもセキュリティです。日本の一部報道では合同チームに反対する韓国民がデモを行なっているなどが伝えられていました。特に、日本大会にどういう形で北朝鮮が関わってくるのか全く予想がつきませんが、少なくとも韓国での様子をチェックしておくのは安全安心な運営に向けて重要事項であろうと考えました。同時に開会式以後も、金与正氏を中心に応援団などが話題になっており、果たしてそのムードはどんなものなんだろうかと素直に思ったわけです。

さて警備体制です。正直な事をいうと、この日の氷上競技会場がある江陵市は強風が昼過ぎから吹き荒れていました。外を歩いても土埃が目に入ってきたり大変な状況でした。オリンピックパークからは一斉退去されるなどし、一部で競技日程を変更するかもという未確認情報が流れます。そして、現地は旧正月直前で日本で言えば年末を迎える中で午後から人が集まってきやすい環境でもありました。ホッケー会場近くの事前チェックゲートには人だかりの列が出来ていました。正直、事前のゲートであんなに並んでいたのは意外でした。

場外では統一旗が無料配布されていた

というのも、他の競技ではスムーズにゲートを通過できましたし、過去にリオ大会やラグビーワールドカップイングランド大会の注目カードでもさすがに帰りに混んでいた事は沢山経験していますが始まる前の混雑にはビックリしました。人が一番集まる開会式でもこういう事は無かったと聞きました。さらに言えば、このゲート入り口では統一旗が無料で配布されていました。私は日の丸ハチマキを巻いて、日の丸のフェイスシールを貼り、team JAPANの応援旗を手にしていますから誰も統一旗を渡そうとはしてくれませんでした。

さて、このゲートの列に並ぶのも一苦労です。レーンの入り口にチケットを持っているかチェックするスタッフがいて、チケットの日時まで入念にチェックされました。余計な人を入れないという判断だった事は間違いありません。また他のゲートではそれほど気にならなかった蛍光イエローの服装で揃っている警察官が多数いました。これも不測の事態に備えてという事でしょうが幸い何も起こりませんでした。場内で金委員長のそっくりさんが出て蛍光イエローの警察と小競り合いもありました。

そんなこんなで、思っていた以上に時間がかかり体育館に入ると地元の韓国応援団の大きな声援が響いています。会場自体はそれほど広くありません。正面と向正面に北朝鮮応援団が陣取り、それと二階席の上の方にもう一団。計3応援団が揃って応援をしています。どうやって練習してきたのか、合図を取っていたのかまでは分かりませんでしたがそれぞれが離れているけど揃っていたのが印象的です。

完全なるホームゲーム

そもそも、ホッケーチームは南北合同ですがやはり基本は地元韓国の応援が主です。ほぼ会場全域で統一旗が振られ大きな声が響き渡ります。その中で、私や山崎都議が声を張り上げても、多勢に無勢といった感です。これまで野球にしても、サッカーにしても「日韓戦」は特別な取り上げ方をされます。実際に競技の現場レベルでは様々な小競り合いも起こってきました。今回はそこに北朝鮮加わるという展開ですから日本のメディアも注目してきたと思います。

でも、私自身が日本が終始リードをして勝利を収めた試合で、何か絡まれたりしたかと言えばそんな事はありませんでした。あくまでスポーツはスポーツという事を実感しました。ただ、あの場内で一生懸命に日本を応援していた稀有な存在だったからかは分かりませんが、国際映像のカメラマンに姿を抜かれました。全くの不意打ちで、どこにカメラがあるのかも発見できなかったくらいです。

妙な空気が漂う

それはさておいても、ハーフタイムになったらちょっと会場の空気が変わりました。突然に北朝鮮応援団が歌い始めたのです。これは何なのだろうかと思いましたが、取材陣が駆け寄った中に私もついついテレビ局時代の習慣からか一緒になって近づきました。ここでも、ご覧の表情でやっています。

しばらくすると、K-POPアイドルが反対側の北朝鮮応援団の上に現れて熱唱を始めると観客が盛り上がります。私はこの前時代的な応援と、最先端のエンタメとが一緒になっている事が妙に気になりました。隣国であり、私は常に両国の動向を見つめていますが、これは文大統領が望んだ事なのか、金委員長が望んだ姿なのか知る由もありませんが、オリンピックに参加しなければ見ることの出来なかった光景である事は間違いありません。

平和がオリンピックの思い

私がこういう事を書く事が北朝鮮の思惑にハマるんだという意見を持たれている方も多数おられると思います。実際にツイッターでは批判の声も届いています。ただ、オリンピック精神は大会中は戦争も内戦も一旦停止しようとオリンピアンは訴えています。選手村入り口には「平和の壁」が用意されそこに各選手からの平和への寄せ書きも記されています。私はその哲学を大事にしなければならないと考えています。

歴史を遡れば、南北合同・統一チーム構想は1964年の東京オリンピックに向けてでした。この時は構想だけで実現はしなかったわけですが、実際には日本には在日同胞が60万人とも言われています。今のところ南北交流は現実のものとなっていません。北朝鮮のパスポートでは韓国に入国出来ない時代を長く過ごしています。ですので、平昌オリンピックには選ばれたメンバーしか応援に来られなかった事に比べれば、在日同胞はそれぞれが様々な思い・考えがあるとは言え、数多くの応援団が潜在的に東京大会には存在しているという表現は過言ではないと思います。

北の応援団はあくまで応援団

私は誰に迎合しているわけでもなく事実を述べています。前述のようにオリンピック憲章にしたがって2020年大会は開かれます。平和を実現させなければいけませんし、文化発信もしていかなければなりません。今回のように南北の指導者が注目されるような大会報道は本来は好ましくありません。日本のメディアが「女性応援団」中心にホッケー競技を伝える風潮にも違和感があります。私はあの会場で歴史的な一戦に運よく立ち会う事が出来ました。実際に、あの応援団がいた3ブロックに目がいく事はありますが、ほぼあの会場にいた大多数は「試合観戦」にきたのであって、応援団のファンクラブではないのです。試合中に「北の応援団」周辺に注目している人はいなかったのではないかと。ハーフタイムであの方達が歌い踊り出した時はさすがに耳目を集めました。

世界で一番を決めるビッグイベント

私は東京大会を大成功に導きたいと思う1人として、20年には政治利用されないオリンピックを実現させたいのです。逆を言えば、北朝鮮がどういう体制で20年を迎えるかはさておき、アスリートの参加に対して壁を作る事もあってはならないと思っています。そして、正々堂々と各競技の中身がフューチャーされればよいのだと思います。それで真の世界一になればよく、メディア操作などスポーツには不要です。これまでも、アトランタ五輪の柔道で田村亮子選手が桂順姫選手に敗れたり、サッカーでは昨年12月に東アジアE-1選手権で男女で対戦するなど多くの人の記憶に残ります。何れにしても、その結果を互いに受け入れ切磋琢磨してきたのです。

間違いなく言える事は、仮に東京で日本と北朝鮮、あるいは合同チームのゲームがあっても今大会で私が経験したような完全アウェーの中での試合はあり得ないという事です。20年には、どの競技に地元の応援団が観客席を埋めて、最大の声援を送ればよいと思います。スマイルジャパンはその歴史を見れば苦しい時を経て、あの空気の中で五輪初勝利を手にしたのですから。私達の応援は大事だという事です。

20年に向けて。セキュリティ、全会場満席、オリンピック精神・マナー教育、盛り上げ方などをこの一戦から学ぶ事になりました。


編集部より:このブログは東京都議会議員、川松真一朗氏(自民党、墨田区選出)の公式ブログ 2018年2月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、川松真一朗の「日に日に新たに!!」をご覧ください。