あなたの善意が、若者の雇用を奪う。

井上 貴至

「助け合い」「おもてなし」
日本の良き伝統です。

江戸時代のような域外に流出するお金が少ない「閉じた経済」では、自分の生業を持ちながら(自助)、地域の中で助け合う(共助)、たまに来るお客さんをしっかりもてなす(交流)ことが、経済的にも合理的でした。

1人が儲け過ぎると、ゼロサムゲームで、他のみんなが損をしてしまいます。

「閉じた経済」から「開いた経済」へ

ところが、現代では、高等教育費、通信費、エネルギー代など地域の外に出ていくお金も増えてきました。

その分を地域でしっかり稼がなければ、

「スマホやめますか、それとも住まうのやめますか」

ということになりかねません。

助け合い、おもてなし・・・これは素晴らしい日本の文化ですが、適正な対価をとって域外に出ていく費用を稼ぐこともしなければ、地域で生活することはとても難しくなってしまいます。

その上で、最近、よく思うのが、「あなたの善意が、若者の雇用を奪っている」のでないかということ。

例えば、
1)道の駅などで、人件費などを度外視した安い値段で販売すること。
2)無償で観光ボランティアをすること

こういうことをやっている人ともよく話しますが、そのほとんどは、助け合い、おもてなしの延長にある善意の気持ちです。

しかし、横で極端に安い価格で提供されると、人件費などを考慮した適正な対価をとることは、とても難しくなってしまいます。

年金もある、高等教育も終わった、通信費もほとんどかからない
という人は、それでも生活できるかもしれません。

しかし、年金もない、これから高等教育もかかる、通信費も必要だ
という人は、それでは生活できません。域外に出ていくことになります。

田舎の技、知恵、豊かさを全てお金に換える必要もありませんし、お金だけで判断するとギスギスして面白くないと思いますが、「開いた経済」では適正な対価をいただくという視点、「あなたの善意が、若者の雇用を奪う」という気遣いも必要ではないでしょうか。

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<井上貴至 プロフィール>

<井上貴至の働き方・公私一致>
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編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2018年2月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。