オリンピック後の日米韓を読む!

田原 総一朗

平昌で懇談する安倍首相、文在寅大統領、ペンス副大統領(首相官邸サイト:編集部)

平昌オリンピックが無事開幕した。熱い闘いが繰り広げられている。

その開会式だが、にわかに注目を集めた。北朝鮮のナンバー2である金永南最高人民会議常任委員長、そして金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正が閉会式に参加したのだ。

日本のメディアはこれを、北朝鮮の「ほほえみ外交」だといっせいに報じた。狙いは、日米韓3カ国のうち、韓国を切り離して取り込む、つまりは分断を狙うという。

今回の平昌五輪のための韓国訪問で、金与正は韓国の文在寅大統領に親書を渡した。北朝鮮へ来て、金正恩党委員長と会談を持つことを要請したのだ。これに対して文大統領は、「条件を整えて北へ行きたい」と、前向きな姿勢を見せている。

ここでいう「条件」とは何か。アメリカと北朝鮮が会談をすることだろう。日本政府はあり得ない、と見ている。だが、オリンピックを背景に繰り広げられる韓国と北朝鮮のこのような状況に対して、日本政府はもちろん、アメリカもかなり神経質になり、いらだっている。

オリンピック終了後に、米韓軍事演習が予定されている。北朝鮮は、この演習の中止を望んでいる。だが、文大統領にそんな決断をする度胸はないだろう、というのが日本側の予測だ。

米朝会談が実現してもしなくても、米韓軍事演習は滞りなく行われるだろう。しかし、米韓軍事演習が行われても、文大統領は北朝鮮を訪問するのではないか。文大統領にとって「南北融和」は、政治家になったときからの目標だからだ。

一方で、米朝間の緊張状態は相変わらず厳しい状況が続くだろう。アメリカが北朝鮮に武力行使するのではないか、という見方は消えない。だが、アメリカが武力行使すれば、韓国はじめ日本など周辺諸国への影響は甚大である。

そう考えれば、アメリカは武力行使をしないのではないか。何よりも、いまの緊張状態を続ければ、北朝鮮という「敵」を持つことになる。アメリカにとってそれは、国内の支持率を維持できるというメリットになる。

つまりは、いまの状況が続くことは、アメリカのトランプ大統領にとっても、実はたいへん都合がよいのだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2018年2月24日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。