「首の痛みや肩こりが治らない」「頭痛がする」「気分がスッキリしない」。このような症状のある人にお尋ねしたい。あなたは「ねこ背」ではないだろうか。私たちの生活のあらゆるシーンに「ねこ背」になる原因がひそんでいる。まずは「ねこ背」のプロフェッショナルに話を聞いてみよう。
今回、紹介するのは『ねこ背を治す教科書』(ソーテック社)。著者は、伊東稔さん(整体師、カイロプラクター)。大学卒業後、会社員時代を経て施術業界に入ったそうだ。ねこ背のしくみをやさしく解説していただいたので一部を紹介したい。
深呼吸で元気ハツラツ
深い呼吸をすると疲労回復につながることは知られている。胸郭の広がりを意識して、鼻から息を吸い込む。そうすると、あら不思議「ねこ背」も改善する。
「ねこ背予防・ストレッチは疲労回復に効果的です。『ねこ背』だと大きな呼吸ができません。胸郭(肺を囲んでいる骨のユニット)が広がらず、肺が膨らまないからです。肺が大きく膨らんで十分な呼吸ができなくなると、酸素の供給量が減ります。供給量が減ることで血流量も減っていきます。」(伊東さん)
「血流量が減った身体の各器官は十分な働きができず、疲労回復がしにくくなります。深い呼吸ができれば、副交感神経が優位になり血管を広げて血流量を増やします。血流量が増えれば、身体の各器官は十分な働きができ、ねこ背を治すとともに、浅い呼吸が改善されて疲労回復力も向上します。」(同)
大きく深い呼吸をすることで、身体全体の血流量を増やして疲労回復しやすい身体になる。さらに、ゆっくりと大きな呼吸が効果的なようだ。つまり深呼吸になる。
「深呼吸は、医学的にも緊張をときほぐす効果が大きいことが認められています。順天堂大学医学部小林弘教授は著書で『ゆっくりとした深い呼吸は副交感神経を刺激するので、血管が開き、抹消まで血流がよくなります。そして、血流がよくなると筋肉が弛緩するので、身体はリラックスします』と効果について紹介しています。」(伊東さん)
「『ねこ背』だと深呼吸をしにくい状態が続くため、浅い呼吸になってしまいます。浅い呼吸だと酸素の供給量が減少するため、回数を増やしてそれを補わなければなりませんが、ねこ背が治れば、呼吸がさらに深くなり緊張もしにくくなるわけです。」(同)
「ねこ背」を治せば仕事がはかどる
「ねこ背」が慢性化するとスッキリしない状況がつづく。デスクワークが増えると、「ねこ背」が慢性化していく。そして、仕事がはかどらなくなる。
「『ねこ背』が慢性化すると、頭がスッキリしにくくなります。頭をスッキリさせるためには、セロトニンという脳内物質を活用するのがいいとされています。精神科医の樺沢紫苑医師の著書『脳を最適化すれば能力は2倍になる』(文響社)のなかで、セロトニンの効果について次のような説明がされています。」(伊東さん)
「『セロトニンが分泌されると、今日も1日がんばるぞという気持ちになります。身体にも力がみなぎり、ハツラツとした気分になります。頭もスッキリとしていますから、すぐに仕事をスタートできる状態になるのです』。深呼吸には、気分転換や緊張を和らげる効果があり、即効性も高いことがわかります。」(同)
また、「ねこ背」の原因は身体の硬さにある。ちょっとしたすきま時間を使ってストレッチする方法を試してみては如何だろうか。「ねこ背」が改善するかも知れない。本書がきっかけとなり、自分の心身と向きあうのが楽しくなってくる人が増えてくる予兆を感じる。さて、筆者も新しい本を上梓した。ご関心のある方は、「ねこ背」にならないように、手にとっていただきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)
尾藤克之
コラムニスト