覚えておきたい。相手をひきつけるオノマトペの技術!

尾藤 克之

写真は書籍書影


あなたは話すことが得意だろうか。気をつけているのに、なぜか嫌われてしまう。上司から生意気だと思われてしまう。部下から恐いと言われる。プライベートでは、異性からモテない。人間関係を築けない。いったい何が問題なのか。これには、「言い方」「声の出し方」「表情」などが大きく影響を及ぼしている可能性がある。

今回、紹介するのは、『CD BOOK 〈引きつける〉話し方が身につく本』(明日香出版社)。著者は、フリーアナウンサーの倉島麻帆さん。NHKでディレクターなどを務めた他、NHK Eテレ「Rの法則」など多数メディアにも出演している。

オノマトペで心にグッと届ける

――オノマトペをご存じだろうか。国語の教科書にも載っていて、フランス語で擬声語(擬音語+擬態語)のことを指す。

「擬音語は犬の鳴き声を『ワンワン』、鐘の音を『ゴーン』といったように、文字で表せない『音』を文字化するものです。擬態語は音ではなく、『様子』を文字にするもので『ピカピカ』『ドキドキ』などがあります。日本語は外国語に比べてオノマトペの種類が多く、日々の生活をより豊かに表現しています。」(倉島さん)

「実は言葉だけの解釈は人によって異なり、共感が得られにくいのです。しかし、オノマトペを使うと、ずっとイメージしやすく、自分の感情を重ねやすいのです。例えば、『温かい』と言うより『ホカホカのごはん』『ホッコリした焼き芋』。または、『楽しいね』と言うより『ワクワクするね』『ドキドキするね』のほうが伝わります。」(同)

――また、倉島さんは、オノマトペを使うとカドが立たないし、マネジメントの局面でも効果的と解説する。例えば、次のようなケースはどうだろうか。

「『早くしてね』と言うより『パパッとお願い』『チャチャッとやってね』はどうですか。このほうが早く行動してもらえそうです。プレゼンテーションの天才と言われたスティーブ・ジョブズ氏は『オノマトペの魔術師』と言われ、強調したいポイントを伝える前に『ブン』『ボン』と言って注意を引きつけ興味をそそりました。」(倉島さん)

「オノマトペ研究の第一人者・学術博士の藤野良孝氏によると『B』の濁音には力強さがあり、スケールの大きさを感じさせ、聴き手の期待感を高め、商品が一層輝きを増して見えるそうです。私は聴衆に質問を投げかけて、その答えをスライドで出すときには大きな声でわざと『ジャン』と言って聴衆の注目を集め期待感を高めています。」(同)

――プレゼンテーションやコンペで自分の意見を通したいときは、話の合間に何度か期待を高める「ドン」を入れると効果的とのことだ。

「これが私の提案です。はい、『ドン』。こうすれば、『ドン』と売上が伸びるはずです。余談ですが、夫にリラックスしてもらいたいときは、『ノビノビしてね』と言っています。文章を書くときにもオノマトペを意識して書くことによって、Facebook投稿もイイネの数が『グン』と伸びるのです。」(倉島さん)

臨場感を高めリアル感を出す

さらりとパッと情景が浮かぶ、そんな臨場感は楽しいもの。楽しいだけではなく、相手の感情に訴えやすくなるという大きなメリットもある。さらに、躍動感を演出するにはもってこいの言葉なので、深い印象を与えることができる。

〈擬音語・擬声語〉※実際の音を描写した言葉
メーメー、ブーブー、ドクドク、ガチャン、ゴロゴロ、ガタンゴトン、パチパチ、チャリーン、ドカン、ズズー。

〈擬態語〉※身ぶりや状態、様子、感情などを音であらわした言葉
バラバラ、メロメロ、モクモク、キラキラ、ギラギラ、ピカピカ、ワクワク、ドキドキ、たっぷり、キュン、ジーン、ムラムラ。

童話作家の宮沢賢治も、擬声語・擬態語の使い手として有名である。
● あちこち星がちらちら現われました
● のっしのっしと大股にやって参りました
(『双子の星』)

このように短い文章でも擬態語によって、読者に物語の場面を想像させる。擬声語・擬態語は多用しすぎると、文章が子どもっぽくなる傾向もあるが、状況を描写するには秀逸なテクニックなので覚えていて損はない。オノマトペを使うときは、感じたままを言葉に変えて、読者の共感を得られるのが理想の使い方になる。

独創性を発揮してさまざまなフレーズを書いてみよう。表現の引き出しが増えて、文章力が磨かれていく。ぜひ覚えておきたい。

尾藤克之
コラムニスト