ドイツ、イタリア、北朝鮮と米国のリスクの行方とそれによる金融市場への影響

ここにきて金融市場に影響を与えかねないイベントが立て続けに起きている。そのひとつがドイツのドイツ連邦議会の第2党の社会民主党でのメルケル首相率いる政党と連立政権を組むかどうかについて党員投票であった。結果次第ではメルケル政権の存続の危機となり、ドイツばかりかユーロそのものの存続にも影響を与えかねない状況にあった。

むしろそのような危機意識も手伝ってか党員投票の結果は賛成多数で連立が承認された。これにより、メルケル首相の4期目の政権が発足することになり、ひとまずこちらの危機は避けられた。

4日に実施されたイタリアの総選挙もユーロの存続に影響しかねないものとなっていた。その結果は大方の予想通り、上下両院ともにどの陣営も過半数を取れずハングパーラメントの状態となった。ただし、中道右派連合が上下院ともに4割程度の議席を取って第1勢力となり、今後の連立交渉の軸になる見通しとなっている。同連合の一角で欧州連合(EU)懐疑派である極右「同盟」と、ポピュリズム政党の「五つ星運動」が議席を大きく伸ばし、今後の連立政権の軸となる可能性が高い。

ただし、今回の選挙ではユーロ離脱などが争点となっていたわけではないことで、ユーロ体制を揺さぶることはなさそうである。ただし、連立そのものがどうなるのかが不透明であり、これまでの政策が大きく修正されるのか。移民問題はどうなるのか。金融絡みではイタリアの銀行の不良債権問題はどうなるのかあたりに注意する必要はある。

そして、韓国と北朝鮮が来月、文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を開くことで合意したとのニュースが飛び込んできた。北朝鮮問題が新たな展開を迎えたともいえる。ひとまず北朝鮮の地政学的リスクは表面上は後退するかにみえるが、予断は許さない。

北朝鮮問題には当然ながら米国も大きく絡むわけだが、その米国ではトランプ政権で経済政策の司令塔だった国家経済会議のトップ、コーン委員長が辞任すると発表された。コーン委員長は、トランプ大統領が表明している鉄鋼製品などに高い関税を課す異例の輸入制限措置に反対していたと伝えられていた。

大規模な税制改革で主導的な役割を果たしたとされるコーン委員長であったが、その辞任によって、今後の米国の経済政策の運営に対して不透明感が強まることになる。さらにその辞任の原因となったとみられる鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課す方針についても、中国などの出方次第では貿易摩擦を強めかねない。

金融市場では順調な世界景気の拡大を背景に米国市場などは過去最高値を更新し続ける状況が続いていたが、2月に入り大きな調整が入った。やっとその調整も落ち着いたかにみえたところに、今後の動向を不透明にさせるようないイベントも発生してきており、引き続き波乱含みの展開となる可能性がある。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。