「だ・である調」「です・ます調」の使い方を知ってますか

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文章の印象は、語尾の使い方で大きく変わります。「だ・である調」は重みがあり断定的、「です・ます調」はやわらかい印象を与えます。「だ・である調」の名文といえば、これです。夏目漱石の処女作『吾輩は猫である』の冒頭を見てみましょう。

文末表現の2パターンを自在に操る!

〈原文〉
吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。

これを、「です・ます調」に置き換えるとどうなるでしょうか。

〈ですます調〉
私は猫です。名前はまだありません。どこで生れたかも全く見当がつきません。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶しています。私はここで初めて人間というものを見ました。しかもあとで聞くところによると、それは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族だったそうです。この書生というのは時々私たちを捕えて煮て食べてしまうという話であります。

である調に比べて、猫が話すという面白みや滑稽さは欠けてしまいました。一般的には、レポート類、論文、記録文などは、「だ・である調」がよく使われます。事実を端的にまとめ、意見を主張する必要性があるためです。ただし、トーンが強くなりがちで、堅苦しい印象を与えることがあります。よって、記事内容によってこの2つを使いわけましょう。

ただ気をつけてほしいことがあります。それは、「です・ます調」と「だ・である調」を混同しないこと! どちらかに統一しましょう。私の場合、通常は「だ・である調」が多いのですが、読みやすさを意識して、媒体によって書きわけています。

語尾を変化させて、リズムをつけよう

2つの語尾についてお話ししましたが、ここでも注意点があります。それは、どちらの文末表現に統一したとしても、同じ語尾が続くと、平坦な文章になり、稚拙な印象を与えます。以下の例文を読み比べてください。

〈語尾が同じ場合〉
アップル航空は、安全運行に対する姿勢について以前から批判を受けています。航空整備士が不足し、整備ミスが相次いだことから、社長は国会に参考人招致されています。多くの人命を預かる航空会社としては不適切ではないかと問題視されています。安全面よりも利益を重視する考え方が、当時から顕在化しています。

〈語尾に変化をつけた場合〉
アップル航空は、安全運行に対する姿勢について以前から批判を受けていました。航空整備士が不足し、整備ミスが相次いだことから、社長は国会に参考人招致されています。多くの人命を預かる航空会社としては不適切ではないかと問題視され、安全面よりも利益を重視する考え方が、当時から顕在化していたことがわかりました。

後半の例からもわかるように、同じ語尾を連続させないことで、文章にメリハリをつけることができます。たかが語尾ですが、その語尾次第で文章全体の印象が決まることを覚えておいてください。「です・ます調」であれば、「でしょう」、「ます」などに、「だ・である調」であれば、「~なのだ」「~思う」などに置き換えて使うなど工夫しましょう。それだけで文章のクオリティーはぐっとアップします。

また、文章術はビジネス面においてのみ重要というわけではありません。お礼状だったり、
案内文だったり、私たちの日常を考えても、文章術は必要不可欠なものになっています。文章スキルを早く習得すれば、情報発信の幅はどんどん広くなるでしょう。文章力はあなたを強力にサポートするスキルであることをお忘れなく。

参考書籍
あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト