東京都の迷惑防止条例改正案の騒ぎに思う最大の問題点 --- 天野 貴昭

現在東京都で審議されている迷惑防止条例が物議を醸しているようなので私見をまとめてみました。

最大の争点は申告罪の非申告化

SNSなどではかなりエキサイトした意見が飛び交っていますが、冷静な批判内容を手繰り集めてみると、

「いやがらせや名誉棄損とは本来当事者の訴えがあって成立するもの(申告罪)」

「当事者外(例えば捜査員など)の判断で罰則を下すなど言語道断である」

…といったご意見が主流のようです。

この意見は確かに一考の余地はあると思います

例えば私は小学生の頃、クラスの女子児童数人からチーム尾行をされ、ついに自宅をつきとめられてしまった経験があります(つまり集団ストーカーです)

もっとも私自身はそれに気づかずPTAで私の母から女子児童のお母様より伝え聞いて知ったのですが、その時私は特に何の不快感もなくただ『直接私に聞けばいいのに』と思っただけで、そして私の母は不快どころか上機嫌でした。

もちろん、今ストーカー被害に悩む被害者の方がこんな甘っちょろい状況でない事は想像に易いです。

ここで私が申し上げたいのは「ストーカー行為自体が悪なのではなく」、「被害者の皆さんが迷惑がられる行為を繰り返す事が問題」だという点と

「私にとって迷惑な行為が、必ずしもあなたにとって迷惑とは限らない」という点

従って「迷惑行為を第三者が忖度する規則に疑問がでるのは、そんなにおかしな事ではないと思える」という3点なのです。

同様の条例は既に全国にかなりあります

ただ、反対者の発信内容、報道のやり方にも疑問があります

(これは私も勉強不足で今回はじめて知ったのですが)この迷惑防止条例に準ずる条例は日本全国47都道府県全てにあり、このうち今回の東京都で行われる予定の様な「申告罪を非親告罪化する事が可能な条例」は私が確認できただけも既に4自治体で施行されています。

従って、本件で都民ファーストさんや知事をあたかも独裁者の様にまくしたてる報道は明確に誤りであると断言できます。本条例に危機感を抱いているメディアの皆様は、まずは既に同様の条例が施行されている他自治体へ同等以上の批判を入れるべきです。

もっとも現実的な選択は自治体による専門人材の助成では?

今回私が感じた本件最大の問題点は「そもそも民事不介入が鉄則の警察機関に、我々市民側が民事案件解決を強いていること」ではないでしょうか?

今後日本が英国の様に「現場警察官に強い権限もあるかわりに彼らにかかる重圧も半端ではない社会構造」を目指すというならばそういった考えもあって良いと思いますし、正直私個人はそれが理想だと思います。しかしながら日本の社会現状を考えるとそれは実現できてもかなり先の話で、必ずしも現実的な判断ではない気もします。

そこでこれは提案なのですが(刑事事件における国選弁護士の様に)ストーカーをはじめ嫌がらせ被害に悩む方の為に民事訴訟に長けた「都選弁護士」「都選行政書士」なる人員を拡充するか、「自宅警備システム導入の助成」をしてみてはどうでしょうか?

そうすれば、お巡りさんの負担も減るし、都庁周囲でエキサイトしている皆さんも落ち着くかもしれませんし、何より被害に悩む皆さんにより専門的なサービスを提供する事ができると思うのですが?

皆さんはどのように考えますか?

天野貴昭
トータルトレーニング&コンディショニングラボ/エアグランド代表