ここにきて米国の株式市場が荒れた動きをみせているが、この背景にFAANG銘柄が関係している。FAANGとはフェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、そしてグーグル(上場はアルファベット)の頭文字をとった造語である。
2015年あたりからFANGと称されていたが。これにはアップルが除かれていたようなのでFANGのほうが一般的かもしれないが、ここではアップルを加えたFAANGとしてみてみたい。
米国株式市場では今年に入ってからもキャタピラーやボーイング、スリーエムなどに加えて、FAANGを中心としたハイテク株が買い進まれ、ダウ平均、ナスダックともに過去最高値を更新し続けていた。
ところが2月5日にダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって引け値の前日比でも過去最大の下げ幅を記録した。米長期金利の上昇などがきっかけとされるが、じりじりと上昇相場が長期にわたり続いてきたことで、その反動が一気に現れたものと考えられる。
これをきっかけに米国株式市場はいったん調整局面となっていた。しかし、2月9日からFAANG銘柄を主体に主要ハイテク株を中心に切り返してきたことで、ナスダックは3月9日に過去最高値を更新した。
その後、牽引役となっていたFAANG銘柄を主体にハイテク株が売られ、再び下落基調となった。
そして19日にはFAANGの一角のフェイスブックの約5000万人分の会員情報が2016年の米大統領選でトランプ陣営キャンペーンに関与した英データ分析会社に不正に利用されていたと伝わったことを受け、フェイスブック株を主体にハイテク株が急落した。
さらに28日にはトランプ大統領がアマゾン・ドット・コムへの課税強化や反トラスト法違反で提訴することなどを検討していると報じられたことで、FAANG銘柄のアマゾンが大幅続落となっていた。
米国株式市場の牽引役となっていたFAANG銘柄に悪材料が相次いだこともあり、米国株式市場は乱高下を繰り返すような状況となっている。もちろんトランプ政権が鉄鋼製品などへの異例の輸入制限措置を発動したことも材料視され、こちらも牽引役となっていたキャタピラーやボーイングなどグローバル企業の株価も影響を受けていた。ただ、ここにきてのFAANG銘柄に悪材料が相次いできたことも、米国株式市場の先行きを不透明にさせつつある。
28日に発表された10~12月期米GDP確報値は年率2.9%増と改定値から上方修正されたように、米国景気そのものは好調さを持続させているが、株式市場はなかなか素直に買えるような状況にはなっていない。むしろ不安定さが増しているように思われる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年3月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。