中国は4日に米国からの輸入品約500億ドル相当に25%の追加関税を課す計画を発表した。対象には大豆や自動車、化学品、航空機などが含まれた。米国のトランプ政権が打ち出した関税措置への対抗策といえる。
これを受けて4日の米国株式市場は急落し、これに驚いたの米政府高官は中国を批判しつつも、交渉を通じて制裁発動を避ける可能性に言及した。国家経済会議(NEC)のクドロー委員長はテレビで「市場は過剰反応しないでほしい」と呼びかけ、今後数か月の交渉を通じて最終的に関税発動を見送る可能性は「ある」とまで指摘。ロス商務長官もテレビのインタビューで「米市場がこんなに驚くこと自体が驚きだ」と語った。
米政府高官が火消しに走ったことも好感し、4日の米国株式市場は、急速に買い戻されてダウ平均は230ドル高で引けた。5日のダウ平均も240ドル高となっていた。
これに気をよくしたのか、それとも金融市場の動向などはおかまいなしなのか、トランプ大統領は5日に声明文を公表し、「中国の不当な報復を踏まえて」1000億ドルの対中追加関税の検討を通商代表部(USTR)に指示したことを明らかにした。自分で仕掛けておきながら、やられたらやり返す、まさに貿易戦争を仕掛ける気なのか。
中国との貿易戦争拡大となれば、こちらも米株の上昇に大きく貢献してきたボーイングやキャタピラーなど中国依存度の高い企業に対しても当然、影響が出てくる。
さらにトランプ大統領はこれまでアマゾン・ドット・コムが米郵政公社(USPS)に非常に安い料金で商品を配送させているうえに、税金を十分に支払っていないとして、同社への攻撃を繰り返していた。これについては、ホワイトハウス内では規制など具体的な議論はされていないと報じられるなど、やはり米政府高官が火消しに走っていた。しかし、そんなことはおかまいなく、トランプ米大統領は5日、ネット通販大手アマゾン・ドット・コムを巡り真剣に政策を検討する考えを示した。
フェースブックによる個人情報の流失問題などから、これまで米国市場の上げを先導してきたIT関連株が不安定な動きを見せてきているが、それもやっと収まってきたかと思われるタイミングで今回のアマゾンに対する発言も火に油を注ぐことになる。
どうやらトランプ大統領は自国の株価を下落させたがっているようにしか見えないのであるが。ちなみに6日の米国株式市場では米中の貿易摩擦を警戒してダウ平均は572ドル安となっていた。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。