今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、ある調査結果が話題となりました。
心の病、10~20代社員に急増 企業調査(Sankei Biz)
メンタルトラブルを発症する従業員はどの年代に多いかという質問に対し「10~20代」と回答した企業が実に27.9%に達したとのこと。ちなみに2004年の調査では10~20代は10.4%ですから十数年で2倍以上という急激な増加ぶりです(当時トップは30代で49.3%。産業人メンタルヘルス白書より)。
実はこの調査は以前から人事の間では有名なもので、「メンタルトラブルは30~40代に集中する傾向が強い」という調査結果も広くコンセンサスを得られていました。そんな中、なぜ若手に心の病が急増しているのでしょうか。良い機会なのでまとめておきましょう。
バブル期の若手にあって今の若手に無いもの
筆者の大学の先輩にこんなことを言う人がいます。
「バブル期なんて週に二日は徹夜していたもんだ。今の若手は根性無さすぎ」
確かに“ワークライフバランス”なんて概念すらなく、TVで「24時間戦えますか」などという(今やったら炎上確実な)CMがばんばん流されていた時代と比べれば、残業抑制の進む現在の若手の労働環境はよほど恵まれているのも事実です。
【参考リンク】働き方改革、「残業代が8.5兆円も減る」の衝撃
ただし、バブル期の若手にあって今の若手には無いモノもあります。それは「10年先はこうなり、20年先にはこうなっているだろう」というキャリアビジョンです。
人間というのは将来に明るいビジョンが見えている時には実力以上の力を発揮できます。逆に明るいビジョンが見えない場合には、実力未満の力しか出せないものです。よく炭坑の事故などで閉じ込められてしまった人に外から一生懸命励ましの声をかけ続けるなんて話がニュースでありますが、あれは「救出のビジョン」を見せることで生きる力を維持させているわけです。
少なくともバブル期、ほとんどの企業においてそうした“ビジョン”はしっかりと共有されていました。世界一となった日本経済はこれからも力強く成長し続ける、自分も30代後半で課長になって若い部下が5人はつけられ、40代で部長になってタクシーチケット使い放題になる……etc
でも、今の20代でそうしたビジョンを持っていられる人はどれだけいるでしょう。既に大卒総合職であっても過半数がヒラ社員の時代、明るいビジョンをしっかり抱けているという人は少数派のはず。かつての実力以上の力を発揮できたバブル期と比べると、相対的に踏ん張りがきかなくなっているというわけです。
【参考リンク】出世遅れ転職少なく 動けない40代、賃金伸びず
ついでに言うと、日本型雇用そのものも大きな負担となっていますね。たとえば職能給という業務範囲の曖昧な賃金制度のおかげで、将来のビジョンどころかその日の仕事終わりすらイメージしづらいわけですから。
みんな同じこと言ってる・・・ pic.twitter.com/ade02BIey7
— 暇ッキー氏 (@magic_mackee) 2018年4月10日
ちなみに、30代40代にメンタルトラブルが集中する理由は、多くの企業において幹部候補選抜が30代で行われるためです。つまり、そこで出世の白黒がついてしまい“明るいビジョン”が見えなくなってしまったにもかかわらず、長時間残業や全国転勤といったメンバーシップ型滅私奉公を要求され続ける中で、踏ん張りがきかなくなってしまう人が続出してしまうわけです。
以降、
“希望”の作り方は2通り
若手ビジネスパーソンにおススメのセルフコンディショニング
Q:「期待に胸膨らませたものを壊さないためにできる事はなんですか??」
→A:「会社ではなく仕事そのものに目を向けましょう」
Q:「仕事自体は好きなんですが自分ばかり負荷が集中して困ってます」
→A:「とりあえず打てる手はすべて打ってみましょう」
雇用ニュースの深層
・黒船効果、着々と
ソニーの5%賃上げの背景には、コア人材の採用で苦戦しつつあるという危機感があります。
・とかく保守的な銀行業界ですが年功序列は完全崩壊するでしょう
1年だけ新卒採用半減させただけでも長く負の影響は残ります。たぶん銀行の人事部は気づいてないと思いますが銀行の年功序列はどの業種より早く崩壊するでしょう。
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年4月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。