先日、日中文化コミュニケーションの授業で、思いがけないゲストを招いた。ヘアスタイリストとして北京でヘアサロン「bangs」を経営している藤田幸宏さん。なぜ、彼が私のクラスに登場したのか。奇縁としかいいようがない出会いがあった。
藤田さんは現在45歳。1993年、東京原宿の「SASHU」で美容師としてのキャリアスタートさせた。日系企業の北京駐在員から強く勧められ、2003年8月、初めて北京を視察し、同年10月には開店準備を始めた。日本の業界の目が欧米に向いているさなかだったが、同じ骨格を持った東洋人を相手に、新たなチャレンジを選んだ。2004年7月、北京の繁華街に「bangs hair salon」を開店させ、現在では2店舗に、藤田さんを含め日本人スタッフ3人、中国人スタッフ9人のチームが働いている。
タイを旅行中の彼からフェイスブックを通じて私に連絡があったのは、昨年の3月1日である。私のブログが目に入ったようで、その感想が寄せられていた。
「私が普段中国で感じていること、また日本の報道への違和感も含めとても共感し、代弁していただいているような気になり、たいへん嬉しく読ませていただきました。そして最後の経歴の部分を読んで、また嬉しくなりました。今現在、加藤様は汕頭大学で教鞭をとられているのでしょうか?」
それに続く一文には驚いた。
「私の妻の実家は、汕頭大学の東門になるのでしょうか、そこで仁和商店というスーパーを営んでいます。向かいのお寺が、妻のおばあちゃんが運営するお寺でして、お寺の前のスーパーも、斜め向かいの小さなsundayスーパーも、皆家族です。私も毎年春節には、お寺で商売繁盛の大切なお参りをしています。息子たちも、長い休みには毎回汕頭で過ごしています。毎日スーパーのレジ周りでバタバタしています。汕頭大学の中でも、息子たちを連れてジョギングしたり、よく行きます。春節のお参りを終え、タイへの旅行中に記事を拝見し、なんだかとても親しみを感じてしまい、こうして連絡させていただいた次第です。もしスーパーに行かれるようでしたら
毎日私の義父、義母がいますのでお声掛けいただけると嬉しいです」
書かれていたスーパーは私がしばしば立ち寄る場所だった。まさかこんな地方で、こんな身近に日本人の縁があるとは思いもよらなかった。率直な文面に、私も親しみを感じた。ちょうど日中文化コミュニケーションの授業を開いたばかりだったので、私は返事をする中で、チャンスがあればぜひ、クラスで話をしてほしいとお願いをしておいた。それが1年後に実現したわけである。
4月8日、初めて大学内の喫茶店で会い、雑談をした。ちょうど翌日が授業だったので、講義をしてもらう約束を取り付け、私がもらった写真で急ごしらえのPPTを作った。
(続)
編集部より:この記事は、汕頭大学新聞学院教授・加藤隆則氏(元読売新聞中国総局長)のブログ「独立記者の挑戦 中国でメディアを語る」2018年4月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、加藤氏のブログをご覧ください。