女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズが民事再生法の適用申請をした。
スルガ銀行の融資について議論が噴出しているが、それに関しては金融庁の検査結果を待ちたい。
本稿では、シェアハウスに住居した場合の契約関係について若干の解説をする。
通常、アパートやマンションを賃貸で借りる場合は、家主など賃貸人との間で賃貸借契約が締結される。
賃借人(借り手)の地位は「借地借家法」で強く保護されており、極論すれば、きちんと賃料を支払って普通に住んでいる限り(何年経っても)退去を強いられることはない。
2年契約であっても「正当な事由」がなければ賃貸人(貸し手)は契約更新を拒絶できない。
所有者が本物件を第三者に売却しても、賃借人(借り手)は第三者に対して賃借権を主張できる。
つまり、新所有者から従前どおりの条件で借り続けることができる。
退去を求めることができる「正当な事由」は極めて厳格に解釈されており、ちょっとやそっとの家主の都合では裁判所は認めない。また、賃料の増額も簡単ではなく、賃借人が争えば裁判所の門を叩くしかない。
賃料不払い等を原因とする強制退去に至っては、勝訴判決だけでなく強制執行の申立までしなければならない。
シェアハウスの入居者の多くが契約している「定期借家契約」は、数か月から1年程度と短く設定されている。
賃貸人(貸し手)は、「正当な事由」がなくとも契約更新をしなくてもいい。
賃貸人(借り手)は期間が3ヵ月と定められていれば、3ヵ月で退去するか、新たに契約を結び直さなければならない。
契約を結び直す際、賃料をグンと上げられたという苦情や、別のシャアハウスに移るよう要求されたという苦情が全国の消費者生活センターに寄せられている。
このように、一般の賃貸借が「賃借権」という強い法的権利を借り手に付与するのに対し、シェアハウスの借り手は、ホテルに長期滞在するようなものだと考えてもあながち的外れではない。
当然、借りる側としても「数か月の仮住まい」のように考えているケースが少なくない。
普通の賃貸住宅のように長期間の居住を前提とするには、権利があまりにも不安定だからだ。
スマートデイズは、スルガ銀行から融資を受けた人たちに、「頭金不要」「他より高利回り」「入居者がいなくても一定の家賃保証」という条件を提示していたようだ。
上記のように、シェアハウスが一種の「仮住まい」的性格を有していることに鑑みると、「家賃保証」など到底あり得ない条件だ。
スマートデイズの一件は、聞くところによると「氷山の一角」だそうだ。
シェアハウスの契約が通常の賃貸借契約と根本的に異なっている点を、出資者も入居者も肝に銘じておいてほしい。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。