責任追及に明け暮れることなく未来志向のセクハラ議論を!

福田前財務次官のセクハラ問題が、被害者不在のまま国会等で議論されている。
国会議員は「国権の唯一の立法機関」の構成員だというのに、延々と責任追及のみに明け暮れて未来志向の議論がなされないのが、私は残念でならない。

従来から、セクハラは企業など組織内部の問題として認識されてきた。
ところが今回の問題によって、(組織内部に限らず)組織同士の関係によっても重大なセクハラ問題が発生していることが世間に周知された。

組織と組織の強弱や上下関係によっては、組織内部よりも遥かに陰湿な問題かもしれない。
自らが属する組織のために、性的嫌がらせを甘受させられる怖れがあるからだ。

組織同士がグルになったセクハラとも言える。
(記者だけでなく)営業関係等の社員などは、頻繁に他の組織の人間から性的嫌がらせを受ける危険があるのに、それに対する制度的手当は極めて不十分だ。

従来のセクハラの分類である「(組織内の)地位利用型」と「環境破壊型」のカテゴリーに入らないことも原因になっているのかもしれない。

私は、被害者従業員の属する組織の経営上の都合でセクハラを受けた場合、被害者の属する組織と上司に第一義的な責任を負わせるべきだと考えている。
組織自体と上司が連帯責任を負担する制度設計が望ましい。直接の加害者も、「強制わいせつ」のような違法行為を行えば当然責任を負う。

ただ、被害者が属する組織と上司は、落ち度がなかったことを証明すれば責任を免除すべきだ。
普通に営業に行って突発的に強制わいせつを受けた場合にまで責任を負わせるのは、いかにも酷だ。

被害者本人も、被害を受けた以降は、加害者との直接的な連絡は一切取るべきではない。

過去の強姦罪(現在の強制性向罪)等の判例は、行為後の両名の態度によって「合意の有無」を判断する傾向が強い。
合意の上で性交渉をしておきながら、話がこじれると「強姦された」と言って告訴する不心得な自称被害者が多数存在したことが原因だ。

行為後に連絡を取り合っていた事実が認定されて、無罪となった判決もある。
自分の属する組織にとっていかに重要な相手であっても、被害を受けた後は決して加害者と接触することなく、一刻も早く担当窓口に相談すべきだろう。

政府の重要なポストにいる人間の違法行為や不適切な行為の責任はもちろん追及しなければならない。
しかし、いやしくもLawmakerたる国会議員であれば、延々と責任追及に終始するのではなく、未来志向的な議論をする義務があるものと私は考える。

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荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。