イランとの核合意はどうなるか

長谷川 良

トランプ米大統領は5月12日、イランとの核合意を破棄するかどうかの決定を下す。トランプ氏は大統領選からオバマ政権時代の外交実績といわれる核合意(2015年7月に最終合意した「包括的共同行動計画=JCPOA」)を「これまで締結された合意の中でも最悪のディールだ」と批判し、その破棄を主張してきた。

▲合意した「行動計画表」を示すIAEAの天野之弥事務局長とイランのサレヒ原子力庁長官(2015年7月14日、IAEA提供)

▲合意した「行動計画表」を示すIAEAの天野之弥事務局長とイランのサレヒ原子力庁長官(2015年7月14日、IAEA提供)

それに対し、イラン側は既に何度も「わが国はパートナーが核合意を堅持している限り、それを遵守していくが、破棄されたならば、核開発計画を継続するだけだ」と脅迫してきた。
イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相は今月19日、ニューヨークでイランの国営放送の中で、「わが国はこれまでJCPOAの内容を遵守してきた。米国が核合意を破棄すれば、わが国にもさまざまなオプションがある。それらは快よいものではないだろう」と述べ、核関連活動の再開を強く示唆したばかりだ。

核合意はイランと米英仏中ロの国連常任理事国に独が参加してウィ―ンで協議が続けられてきた。そして3年前、JCPOAで合意が実現した経緯がある。核合意の内容は、イランが濃縮ウラン関連活動を制限し、貯蔵量や遠心分離稼働数を縮小する一方、イラン側が核合意を遵守する限り、欧米諸国の経済制裁を段階的に解除するというものだ。

米国はイランが核合意内容を遵守しているかを90日ごとに判断して議会に報告する。一方、JCPOAの内容を検証する国際原子力機関(IAEA)はイランの核合意の履行状況を現地査察を通じて3カ月ごとにまとめ、加盟国に報告してきた。IAEAの天野之弥事務局長は最近の3月理事会では、「イランはJCPOAを遵守している」という内容の報告書を提出している。

トランプ米大統領はこれまでイラン問題では核開発だけではなく、中距離弾道ミサイルの発射実験や国際テロ活動の支援活動にも言及し、「イランは核合意する一方、ミサイル開発を継続している。シリアとイエメンでは武装闘争を支援している。オバマ前政権は核合意後、イランがより開かれた社会となるだろうと予想したが、実際はその逆だ」と指摘、強い警戒心を示してきた(「イランと北朝鮮の科学技術協定」2012年9月3日参考)。

ちなみに、イランは昨年1月29日、中距離弾道ミサイルの発射実験を実施した。ミサイルの飛行距離は約1010キロ。同ミサイルが核搭載可能なミサイルかは不明だ。イランは同年9月23日に入っても新たな中距離ミサイルの発射実験を実施し、「成功した」と発表している。

一方、英仏独の欧州3国は核合意の維持を主張し、トランプ政権を説得する外交攻勢を取ってきた。
独週刊誌シュピーゲルによると、ドイツ、フランスと英国3カ国の約500人の国会議員は米議会宛てに書簡を送り、「イランは核合意を遵守しているが、米政府はそれを破棄しようとしている」と指摘、大統領の核合意破棄を阻止すべきだと訴えている。

また、欧州連合(EU)外相理事会は今月16日、イランがシリアのアサド政権ばかりかイエメンでイスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ派」を、レバノンではシーア派武装組織ヒズボラを軍事支援しているとして、イランの関係者、企業を対イラン経済制裁のリストに掲載することを協議している。その狙いは核合意を破棄しよとしているトランプ大統領を説得し、EUが率先して対イラン制裁を新たに強化することで、トランプ大統領の懸念に応えようというのだ。
ルクセンブルクのジャン・アセルボーン外相は、「核合意を救済するために対イラン制裁を強化しなければならない」と単刀直入に述べている。

トランプ氏が欧州3カ国の外交努力に敬意を表し、イラン核合意を当分維持する方向にいくかもしれない。イラン核合意の行方は北朝鮮の非核化交渉にも影響を与える。だから、トランプ氏は6月初旬までに開催予定の米朝首脳会談を最優先し、イラン核合意への最終決定を先延ばしすることは十分予想されるわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年4月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。