あなたの名前は鈴木さん。ある専門商社で営業を担当している。役職は係長で勤続年数は10年を超した。営業部の陣容は14名。部長1名、課長2名、係長2名、平社員が8名にアドミ専任の派遣スタッフが1名いる。部長は温厚だが、日頃の業務は課長に任せているためあまり関与はしない。課長はともに気性が激しく「鬼軍曹」として恐れられている。
鈴木さんは、課長とウマが合わなかった。毎日のように叱られて精神的にもかなりシンドイ思いをしている。手間取っていると仕事が山積して仕事がまわらなくなる。「ちくしょう。なんでオレばかりがこんな目に・・・」。さらに、オーバーワークでミスを連発。課長は怒り狂い同僚や部下の冷たい視線がつらい。毎日が不満だらけだった。
圧倒的な成果は評価を一新する
このように、上司と部下の関係性のなかで、意思疎通の難しさを感じている人は少なくない。では確認したい。上司から指示があった際、あなたはどのような態度をしているか。意思疎通の難しさから「面倒だからあまり聞いていない」と言う人が少なくない。上司の伝える能力にもよるが、これでは意思疎通が改善することはない。
鬼軍曹に「わかりやすく説明してほしい」とは聞けないもの。結果的に、「何度言ってもわからないヤツ」になってしまう。放っておくと、深刻なコミュニケーションギャップに陥る。このような場合、相手が変わることを期待してはいけない。いますぐに状況を変えたいなら、あなたが変わるしかない。時間が経過しすぎると会社に居づらくなってしまう。
そんな時に「転職しようかな」と思い始める。転職は魔法の杖だから、イヤなアイツから離れることができるし、環境が一新されるのでリセットすることができる。ガマンするよりは辞めてしまったほうが正解ともいえる。しかし、ある条件を満たしてからのほうがいい。それは、イヤなアイツに評価させてから辞めることである。
これをしておかないと、インターバルは短くなりジョブホッパーとなってしまう危険性がある。そのためにも、在籍中に「苦手意識」を改善しておいたほうがいい。では、イヤなアイツがどうすれば評価するのか。これは、「有無を言わさない実績」しかない。上司にとって、一番のご馳走は「数字」である。それが圧倒的であれば周囲の評価も高くなる。
冒頭の鈴木さんのケースであれば、「通常1ヵ月掛かってやる仕事を3日で終わらす」「年間の営業目標を1ヵ月で達成する」「大型案件を受託する」などの成果があれば、課長は何も言えない。場合によっては、鈴木さんが昇進して課長と同じ立場になる可能性も出てくる。課長に好かれるのではなく有無を言わさなくすればいいのである。
それでも新天地を求めるなら
圧倒的な成果があがってから退職したら会社にとっては大損になる。きっと部長が慰留するに違いない。部長でだめなら社長が説得するかも知れない。その時点での評価は以前とは全く異なっている。社内で仕事がやりやすい状況になっていることは間違いないから、改めて身の振り方を検討してもいいだろう。
私の場合がまさにこれだった。圧倒的な成果を計上してやめるのだから、理不尽な会社に警鐘を鳴らしたつもりだった。ところが、会社には組織慣性がある。1週間もすれば私が居たことなどみんな忘れる。次の会社を理解するにも数ヶ月はかかる。新天地を求めることは自由だが、置かれた環境を冷静に俯瞰することをおすすめしたい。
それでも慰留を振り切って新天地を求めるのであればそれも悪くない。上司はあなたが退職したことの責任を負わされるだろう。きっと女神はあなたに微笑むに違いない。
万が一、「圧倒的な成果を出すために頑張ったけどダメだった」としても心配はない。圧倒的な成果を出すためにはそれなりのハードワークが必要になる。成果が出なかったとしても、その仕事ぶりを見て上司や周囲の評価は変わるはずだ。もし評価が変わらない場合には、あなたの目が正しかったことになる。正々堂々と退職届けを提出すればいい。
尾藤克之
コラムニスト