4月24日に、米10年債利回り(長期金利)は大きな節目となっている3%台に上昇した。米長期金利が3%台に乗せたのは4年3か月ぶりとなる。目先の目標達成でいったんここで足踏みする可能性もある。
23日に米長期金利は3%に接近していたが、この日は米国の長期金利だけでなく、アジアやオセアニア、北米、南米、そして欧州諸国の長期金利が総じて上昇していた。同様のことが4月19日にも起きていたが、これを見る限り、それぞれ個別要因で動いていたというよりも、特に米国の長期金利の上昇を受けて、各国の長期金利も影響を受けたともいえる。つまり米国で長期金利が上昇する要因に他国も影響を受けていたともいえる。
そうとなれば、やはり今回の世界的な長期金利の背景として考えられるのは、原油価格やアルミやニッケルの価格上昇など商品価格の動向であろう。これによって今後インフレ圧力が強まるとの見方かと思われる。
原油価格の上昇の背景にはOPECなどによる減産も影響しているが、世界的な景気拡大による需要拡大も影響している。アルミやニッケルが急騰しているのはロシアのUCルサールに対する米国の制裁措置によるものとみられるが、景気の拡大も寄与していよう。ただし、これについては注意も必要で、対ロシア追加制裁の対象となっているアルミニウム大手のルサールから供給を受けている米企業に対し、米財務省が制裁措置への対応期限の延期を表明しており、これを受けて、アルミニウム価格が急落していた。
世界的な景気拡大と世界的なリスクの後退によって、米国の中央銀行であるFRBは正常化を進めており、それを受けて特に中短期債の金利が上昇した。しかし、物価の低迷もあって長期金利の上昇は限られ、長短金利差が大きく縮小していた。今回はその反動が起きたともいえる。
そして、日銀は依然として異次元緩和を続けざるを得ないことで、イールドカーブコントロールも緩められず、日本の長期金利はほぼゼロ%に張り付いている。となれば米国の長期金利の動向がそのまま日米の長期金利差となり、いまのドル円などはこの金利差に敏感になっている面もあるため、ドル円も節目とされた108円を抜いてきた。こうなるとドル円は110円が視野に入る。
原油価格の上昇に対してトランプ大統領は人為的だと批判した。今後ドル円が上昇してくれば、日本の長期金利も人的に抑え込んでいると批判がくる可能性もある。それで日銀が動くとは思えないが、日本の政局等次第では日銀の異次元緩和政策を取り巻く環境が今後変化してくる可能性もある。日本の長期金利が果たしてこのまま低位で抑えつけていられるのか。いずれ試されよう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年4月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。