話題のムーギー・キム氏が語る一流エリートの健康法とは

尾藤 克之

写真はムギー・キム氏(出版社より提供)

ここ数年でビジネス著者の頂点に上りつめた人がいる。ムーギー・キム氏。『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『一流の育て方』(ダイヤモンド社)などがベストセラーとなり、6カ国語で展開、 50万部を突破。英語・中国語・韓国後・日本語の4カ国語を操るマルチバイリンガルでもある。

今回紹介するのは、ムギー氏の新刊『最強の健康法(ベスト・パフォーマンス編)』『最強の健康法(病気にならない最先端科学編)』(ともにSBクリエイティブ)。50名を超える日本を代表する名医・健康専門家のオールスターチームを結成し、「誰でも簡単に深く理解できる1冊」をコンセプトに、各専門家の知見を確認して、本書でまとめ上げた。世界中のビジネスパーソンの健康法をまとめた上下刊になる。

ベストセラー作家が考えた健康法

本書によれば、医師が実践している健康法はシンプルでお金のかからないものが多いそうだ。事実、医師の書いた健康書の種類は多い。しかし、そのなかのどの理論が正しいのか、読者にはわからない。ムギー氏は次のように解説している。

「実は私自身、健康書の類を読んだことがなかった。それはそもそも、『たくさんあって1冊、どれを読んだらいいかわからない』ことと、「偽情報が多くて信じられない』こと、また『別に健康には自信があるから、パフォーマンスが上がらないなら興味がない』、そして『医師に難しいこと言われても読む気がしないし、健康本にある人体の絵はグロテスクで、見る気がしない』からだ。」(ムギー氏)

「私が本書を制作することにしたのは、本書の編集を担当してくれたSB クリエイティブの小倉碧氏から、今をさかのぼること2年前『グローバルビジネスパーソンが実践している健康書』の執筆を打診されたときだ。私はその申し出を、当時飲んでいたアイスコーヒーをひっくり返しながら断った。」(同)

事実、書店とAmazon には、似たような文言の健康本が山積みされている。世の中には、志のない医師も多く、間違った健康情報と不要な薬が市場に氾濫している。さらに、「すべての病が全部治る」というような眉唾モノの書籍が多い。しかし、ムギー氏はビジネスのエリートだが医師ではない。どのような立場で本書を執筆したのか。

「私の役割は、プロジェクトマネジメントおよび、『映画の監督』的な役回りです。本当に信頼できる医師・健康専門家のオールスターチームを集め、その信頼性を担保し、私のような集中力と健康知識ゼロの人でも簡単に読めるよう、2年の歳月をかけて『最強の健康の教科書』をコンセプトにした、本書の制作に取り組んできた。」(ムギー氏)

「本書には老いも若きも、女性も男性も子供も全員が毎日実践する、朝ご飯、食事、歩き方、座り方、呼吸法、モチベーションの高め方、集中力の高め方、怒りの抑え方、疲労回復法、神経の休め方、入浴法、睡眠法を、すべて1冊にまとめている。」(同)

パートの一部に言及したい

医師のエビデンスを極めて平易な言葉で端的に説明している内容にも驚かされる。絶妙に配置された「かわいらしいが、正確なイラスト」は理解を促進するうえで役立つに違いない。医師のエビデンスについては専門外であることから論考することが難しいが、EQについて解説されているパートがあったのでその箇所について解説する。

私は人事が専門分野である。そのなかでも、EQに関しては実績が多く、日本初のモバイル公式サイトEQ診断作成(インデックス)、日本初の結婚情報産業EQ診断作成(Zwei)、世界最大のリスクマネジメント団体、リスクマネジメント協会日本支部の正会員講座(HCRM)監修などがあり、専門的な立場であると自認している。

本書で、EQについて紹介されているのは、マインドフルネスのパートで、荻野淳也氏(一社・マインドフルリーダーシップインスティテュート・代表理事)の執筆になる。

「思いやりを高めるマインドフルネスでは、『慈悲の瞑想』と言われるものがあります。これは世界的に行われているメジャーな実践法で、まずは自分自身に対して、『健康でありますように』『幸せでありますように』と念じます。そして、同じことを家族や友人、同僚、上司、さらには嫌いな人に対しても念じるのです。」(萩野氏)

「しかし近い将来、単純作業のような仕事はAIに取って代わられると考えれば、せめて嫌いな上司や知人の健康を願えるくらいには、人徳とEQを高めておいたほうがよいだろう(……といっても私には絶対、無理だけど)。」(同)

この点について言及する。まず、マインドフルネスとEQが密接な関係にあることは間違いない。しかし、ヨガ、座禅などと無理にEQを絡めているので混同し易い。私は、ヨガ、座禅にはそれぞれの役割や意味があるものと考えている。EQは広義のものであるから、自分の解釈だと言われればそれまでだが、少々違和感を覚えた。

医学書としての価値は高い

私は、EQJAPANという組織で、EQ理論提唱者のイェール大学のピーター・サロベイ博士(第23代イェール大学学長)、ニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士と共同研究をおこなっていた。高山直(現・株式会社EQ会長)を代表にし、私はソリューション部門と戦略部門を統括する責任者の立場にあり、日本にEQを広める活動をしてきた。

ブームのあとに出現した商品(検査、研修、書籍など)の多くは、理論を無視したものが多かった。私自身は現在、EQを推進する活動はしていないが、誤った解釈が広まることを憂慮している1人ではある。僭越ながら、この点は懸念として申し上げておきたい。

多くの医師が手がけた本としては秀逸で医学書に近い存在感がある。東大医学部で教鞭をとる中川恵一氏、順天堂大大学院で教鞭をとる堀江重郎氏がダブルチェック、トリプルチェックしている点からも読むべき価値の高い書籍であることは間違いない。

尾藤克之
コラムニスト