地銀の「外債運用失敗」が個人投資家に教えてくれる「2つのこと」

日本経済新聞電子版の記事によると、外債運用に失敗して、損失を出す地銀が増えているそうです(図表も同紙から)。

国内の地銀全体の債券運用益は、5年前に比べ2600億円も減り、2018年3月期は赤字になった可能性もあります。ただし、この債券損益の中には、外債だけではなく国内債券の収益も含まれているはずです。外債で損失を出して、国内債の激減した収益でまかなえなくなっている状態と思われます。

このニュースは個人投資家に2つのことを教えてくれます。

1つ目は、低金利下では債券運用を行ってはいけないということです。金利が上昇すると、保有している債券の価格は下がります。金利の高い長期債ほど金利上昇によるマイナスの影響を受けます。アメリカの金利が上昇すれば、米国債を保有していた地銀の資産は毀損することになるのです。

低金利が続く環境下では、長期債への投資は禁じ手です。むしろ、お金を借りてその資金を投資する対象から得られる収益とのイールドギャップを狙うべきなのです。金利上昇リスクはありますが、一定の範囲であれば、金利差で吸収可能です。

そしてもう1つは、自分がわからないものに投資してはいけないということです。地銀の外債運用担当者は、資産運用業界で経験を積んできた人ではなく、素人同然の人も多いとされています。人員も少なく、リスク管理やマーケット分析も充分されているとはいえないのです。

「1人の運用担当者の勘で売買していた」「運用チームが数人しかいない」「値上がりで利益が出る商品と、値下がりで利益が出る商品を同時に買う。利益は決算に計上する一方、損切りはせず損失を抱えた」といった例が紹介されています。何ともゾッとする危なっかしい手法です。

金融取引とはプロ同士の戦いです。素人がいきなりマーケットに入っていっても、知識や経験に勝る人たちにフルボッコにされるだけ。

預金で集まった大量の資金が運用難で収益を上げられず、消去法的に他行との横並びで外債に投資していった地銀。今後さらに収益性が低下して、合併という実質的な淘汰がこれからも進んでいくでしょう。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。