いま卓球がアツい!昨年、テレビ東京が放映した「世界卓球」が火をつけたとも言われている。事実、G帯週間平均8.6%を記録し開局初の民放3位に躍進したのもこの時期。それ以降、ブームがじわりと浸透し、2020年東京五輪での期待も高まっている。しかし、卓球の番組を見ているときにあることに気がついてしまった。昔はペンホルダーが一般的だったが、世界レベルの大会では、ペンホルダーの選手を見かけることはまずない。
今回は、卓球ビジネス専門家として活動する、永長佳明さんにペンホルダーを見なくなった理由について伺った。現在、「卓球便.NET」の運営、卓球スタジオ経営をおこなっている。本記事の画像は永長さん本人。本記事用に送ってもらったが、卓球をプレイする際にはラフな服装が理想とのこと。まれにスーツ姿の会社員もいるらしいが。
ペンホルダーが廃れた3つの理由
「近年、卓球選手をお茶の間で観る機会が増えていますがいつの間にか見かけなくなった理由があるのです。ラケットをペンで持つように握る“ペンホルダー”の選手。現代卓球はシェークハンドが主流ですが、ペンホルダーが卓球界の中心だった時代もあるのです。そんなペンホルダーを見かけなくなった理由をお教えしましょう。」(永長さん)
「その理由は3つあると思います。1つ目の理由が『ラリーが続くようになったこと』。一昔前の卓球のプレーは、打ち合いが続くシーンが少なく、観ている観客からはとても退屈なものでした。これを払拭するため多くのルール変更が行われてきました。」(同)
それはどのようなルール変更だろうか。永長さんによれば、ボールの直径が38mmから40mmに変わり、少し大きくなったことで回転とスピードが減少した点にある。また、ボールの素材がセルロイドからプラスチックへと変更された。
「素材の変更によって、ボールとラバーの摩擦が弱まり、回転量を落とすことでラリーが続くようになりました。次に、2つ目の理由です。ラリーが続くようになったことで、ペンホルダーの弱点が浮き彫りになりました。ペンホルダーの選手はバックハンドの攻撃で強い回転をかけられない弱点があります。」(永長さん)
「シェークハンドが主流になってくるにつれてバックハンドの技術は向上し、ペンホルダーの選手はバックハンドで引けを取る場面が増えてしまいました。このことがペンホルダーを見かけなくなった最大の要因といっても過言ではないでしょうか。」(同)
そして、3つ目の理由になる。これがチキータの登場だ。ラケットの裏面を使って打つ台上技術で、主にシェークハンドの選手が使用する。この技術によって選手は台上のネットに近いボールに対しても、強烈な回転をかけて攻撃を仕掛けることが可能になった。
「チキータはラケットの裏面を使って打つ台上技術であるがゆえに裏面を使わないペンホルダーの選手は先手争いで一歩引けを取る状況になってしまいました。また、チキータはバック側に打たれるパターンが多く、バックハンドで処理する技術もトッププレーヤーでは重要な要素になります。ペンホルダーの構造的な弱点がここでも現れる結果となってしまいました。」(永長さん)
ではまとめてみよう。永長さんによれば、ペンホルダーが廃れた理由は以下の3つに集約される。(1)ラリーが続くようになったこと、(2)ペンホルダーの弱点が浮き彫りになったこと、(3)チキータの登場。しかし、これはあくまでもトップ選手に見られる傾向であり、一般のプレーヤー層ではペンホルダーで活躍する選手は大勢いる。
卓球ブームはどこに向かうのか
実はいま、都市部を中心に多くの“卓球スクール”が出店されている。老若男女誰でもプレーできる特徴を持つ卓球。笹川スポーツ財団の調査によれば競技人口は本格的なプレーヤーからレジャー層まで含めると約900万人ともいわれている。
4月29日から、2018世界卓球選手権スウェーデン大会が開催される。永長さんは、「卓球はここ数年で知名度と人気が上がり、テレビでもよく見るようになりました。一昔前は、卓球と言えばダサい・暗い・地味といったネガティブ要素がありましたが、今ではそんなイメージも払拭されてきたように思います」と目を細める。
また、経験者はもちろん、温泉卓球しかやったことの無い人から全くの未経験者でも、新たな趣味として始める人が増加しているという。「いまの人気が継続すれば、10年後にはテニススクールよりも、卓球スクールがポピュラーになっていても不思議ではありません」と、永長さんは力説する。
私の知人の会社では倉庫を改装し卓球台を置いて従業員に開放している。「気持ちよく汗をかける」「スマッシュの打球音が爽快」。GWの予定が決まっていないあなた!卓球にチャレンジする機会が到来した。1ゲームいかがだろうか?スマッシュの音が病みつきになるかもしれない。また、2018世界卓球選手権スウェーデン大会の応援もお忘れなく!
尾藤克之
コラムニスト