都民ファースト荒木代表は、メディア対応が「まるでダメ子」か?

新田 哲史

きのう(5月1日)の都民ファーストの会(以下、都F)所属都議のブログ削除措置に対する抗議文については、都庁記者クラブから複数の社から取材を受けた。1社くらいはアゴラのことを取り上げるかもしれない。アゴラ編集長として取材される側に回るのは、ちょっと不思議な気分だったが、取材ついでに色々と都政をめぐる情報や意見を交換する機会にもなった。

問い合わせを受けた、ある社の記者と意気投合したのは、ここまでの都F執行部による危機管理や、メディア対応の稚拙さだ。今回の問題でいえば、当該の都議ブログは決して反党的なものではなく、やらせ質問疑惑に関してもむしろ小池知事を擁護していた。しかし、この問題への釈明が不十分な現状に、有権者からの問い合わせが相次いだ都議が、地元のリアルな社会で説明していた内容をQ&A方式にとりまとめたに過ぎない。

ましてや一度公になったブログを削除すれば、かえって騒ぎが大きくなるのは火を見るよりも明らかなことだ。特に近頃は政治家のブログで出来の良いものは、アゴラをはじめさまざまなネットメディアに転載もされ、ヤフーニュース、スマートニュース、グノシー等のキュレーションメディアにも拡散している。ある社の記者は、削除された記事がすでにネット上に拡散していたものを読んでいた。

こうした実情があるにもかかわらず、過剰な削除命令に踏み切ったのは、党本部が関与してない中でネガティブな話題に触れることをとにかく避けたい一心だったからなのだろう。「臭いものにはすぐ蓋をすればいい」という直情径行的な発想ともいうべきか。おそらく都議個人のブログさえ打ち消せば、どうにもなると思ったのだろうが、断を下した人物は、昨今のネットの言論状況に通じていない可能性が高い。結局、将棋やオセロでいうなら、二手、三手先を読まずに目の前のピンチをただしのごうと汲々として後手に回ることになった。

そもそも「統制」をしたいのであれば、抗議文でも指摘したように党本部の公式サイトできちんとした見解をすぐに打ち出すべき話だった。企業不祥事でいえば、リコール案件が発覚したというのに、会社のウェブサイトで適切な対応策を出していないに等しい。2日未明時点でも都Fサイトの新着記事は、1か月前の予算案通過で止まったままだ。

都議選立候補時の荒木氏と小池氏(荒木氏サイトより:編集部)

今回の都議ブログの削除命令を出したのが誰かまでは特定できていないが、しかし、それが党執行部の誰であれ、党の代表である荒木ちはる都議(中野区選出)の最終的な責任は免れまい。彼女は、政界きってのメディアプロデューサーとして辣腕をふるってきた小池知事に長年秘書として支えてきた腹心だ。情報戦の仕掛け方、あるいは想定外の事案があっても極力傷を浅くして乗り切る術など、“小池流メディア操作術”を熟知しているはずの彼女が、もろもろ、このような稚拙な広報対応をしていることが誠に不思議でならない。

メディアによっては、小池氏から発信術を学んでいると見込んでいた向きもあるようだ。NewsPicksは、この4月からあの世界的な国際政治学者、イアン・ブレマー氏らとともに、専門家がニュース記事にコメントを寄せる「プロピッカー」に荒木氏を就任させた。

NewsPicksより:編集部

ブレマー氏らとラインナップされるくらいだ。このほど編集長からCCOに転身した佐々木紀彦氏には、その天才的な感性で、零細メディアを運営する凡才の私にはわからない、なにか壮大なポテンシャルを荒木氏に見出しているのだろう。

小池氏の代弁者として、そしてブレマー級の鋭い論評が出るのか注目していたが、4月に彼女がコメントしたのは、わずか8本の記事のみチョーヤ梅酒を取り上げた産経ビジネスの記事をピックした際には、「こりゃ絶対ウケるな!」というたった一言だが、酒豪の多い熊本出身らしい含蓄のあるコメントをしていた。ただ、ほかの記事もそうした短い一言にとどまることが多く、12日を最後にコメントはない。あるプロピッカーの経験者に聞くと、月額2万円で30本(1日1記事)へのコメントがノルマとして課されるそうだから、契約違反になっていないのか、あるいは個別に特殊な契約になっているのか、ユーザーとしては、いささか気になるところだ。

ひとまず5月から仕切り直しがあるのか、そして数々の小池都政の問題点を追及する記事にも的確で真摯なコメントがあるのか。少なくとも、あの小池氏の秘書だったわけだから、このままメディア対応が「まるでダメ子」などとまさか言われないと思うが、NewsPicksが誇る、ブレマー氏と並ぶ世界的な都議会議員の発信に注目したい。「世界の荒木ちはる」なら、もちろん、抗議文への真摯な回答があるものと期待している。