市場調査の矢野経済によれば2016年度の国内のヘアケア市場規模(毛髪業市場、植毛市場、発毛・育毛剤市場、ヘアケア剤市場の合計)は事業者売上高ベースで、前年度比100.6%の4,408億円。植毛市場、ヘアケア剤市場が好調との結果になっている。
「髪の毛はすべて過去のもの、変えられるのは未来に生えてくる髪の毛のみである」と主張するのは『美髪はよみがえる 毛の1本1本を元気にする習慣とケア法髪は増える!』(光文社)の著者、山田佳弘さん。前作のベストセラー『髪は増える!』(自由国民社)から3年をかけて書き下ろした最新作になる。
頭皮を清潔にしないといけない
薄毛は突然やってきて、気がつくと支配下に置かれる。薄毛を自覚し始めると、ヘアスタイルで隠そうとする。とくに身近な人からの指摘はショックが大きい。ヘアケア商品を販売する番組では「薄毛は皮脂が原因」と主張するが、皮脂を過剰に落とし過ぎると一層補うために皮脂を分泌することになる。つまり、過剰皮脂の原因になる。
私の知人は増毛サービスを提供する某社のサロンで、頭皮の毛穴を見せられながら次のように言われた。「皮脂で汚れていますね!」。言われるまま、ヘッドスパで皮脂を取り除いた後には次のように言われた。「皮脂を取り除いたので地肌が赤くなりました。これで育毛剤も浸透しやすくなります。血行が良くなった証拠ですよ!」。
「育毛サロンでは、『毛の成長を妨げている、皮脂を取らないと育毛剤は効かない』と言われます。このような考え方は、私が育毛の仕事を始めた2000年頃には、すでに育毛業界では主流で、いまでも、化粧品や美容業界·育毛業界ではそういうことになっています。毎日の洗髪があたり前で、そうではない人は『不潔』と言われています。」(山田さん)
「では、それによって30~40年前よりも薄毛に悩む人、髪の毛や頭皮で悩む人が減っているのでしょうか?私が育毛相談を承り始めて17年以上の歳月が経過しました。この間、さまざまな薬が認可されましたが、薄毛でお悩みの方からのご相談が減ることがありません。頭皮のトラブルでお悩みの方からのご相談が増えているくらいです。」(同)
山田さんは、体を保護するために分泌されている皮脂を取り去るケアを每日しているからだと主張する。頭皮が脂っぽい、頭皮が臭う、頭皮がかゆい、頭皮が赤い、フケ症。これらは皮脂を取って頭皮を清潔にし過ぎる習慣が原因であると。
「頭皮を清潔にする習慣で、頭皮は弱っていきます。頭皮と毛穴の皮脂を取って清潔にし過ぎるケア法が原因だと私は考えています。皮脂を取り、毛穴を掃除するシャンプーは、界面活性作用が強いので、毛を育てる力を弱め、毛を支える部位が弱り荒れてしまいます。成長期が短くなった毛が増え、抜けやすい毛も増えてくるのです。」(山田さん)
消費者も正しい知識と啓蒙を
ノンシリコンシャンプーは髪の毛に優しいといわれている。しかし、ノンシリコンであっても、他の成分が髪の毛に悪い影響を与える場合がある。無添加や育毛シャンプーという表示も要注意である。無添加は自社規格で無添加としている場合が多いため、基準があいまいだからである。育毛シャンプーも成分を調べたら、家庭用洗剤と成分が変わらないようなケースも少なくないといわれている。消費者も正しい知識と啓蒙が必要になる。
山田さんは次のように指摘する。「髪の毛の問題は、初期であればあるほど改善しやすく改善率も高いです。時間が経過すればするほど改善するのにも時間と手間がかかります。初期とは、『あれ、毛が少しおかしい、シャンプーを変えようかな』と思ったり育毛剤を検討したり、髪の毛の将来に不安を覚え始めるころです」。
私たちも、抜け毛のメカニズムや、シャンプーの実態を知ることが必要である。髪の毛にとって大事なことは何か?さらに、自分に合った育毛方法を見つけることが望ましい。早い時期に取組むことで、不安は軽減されていく。
尾藤克之
コラムニスト