昨今、コミュニケーション能力が(日本だけでなく世界的にも)重視されている。
日本の企業の新卒採用基準でも、「熱意、やる気、前向きさ」という精神論に次いで「コミュニケーション能力」が重視されている。
そこで、今回は「その1」として、初対面での留意事項を挙げてみた。
私の主観も多分に入っているので、あくまで「ご参考までに」という程度で目を通しいていただければ幸いだ。
1 初対面の挨拶
とりわけ米国帰りの人の中には、「初対面の人とはしっかり握手をして、目を合わせよう」と勧める人がいる。
相手が欧米人であったり外資系企業の従業員の場合はそれでいいかもしれないが、日本人同士の場合は相手が面食らってしまう恐れがある。
特に、若いビジネスパーソンが、年長者にいきなり握手をするのは日本では奇異に映る場合が多い。
“郷に入っては郷に従え”だ。会社で教えられたように粛々と名刺交換をすればいい。
私は銀行の新入行員研修で、自分の名刺は右手で渡し、相手の名刺は両手で受け取るように、と教わった。
昨今は、自分の名刺も両手で出す人が多い。
個人的には自分の名刺を賞状のように両手で渡すことには抵抗があるのだが…。
名刺交換の時、さりげなく相手の目を見て微笑んで頭を下げると好感度が上がることが多い。
”お目にかかれてうれしい”という気持ちが伝わるからだ。
2 本論に入る前
「本日はお忙しい中お時間を頂戴し、誠にありがとうございます」「本日は、わざわざご足労いただき誠にありがとうございます」等々、相手への感謝の気持ちを言葉にして表そう。
たった一言だが、この謝辞があるのとないのとでは、第一印象が大きく違ってくる。
神経質な相手だと、謝辞がないと「無礼な奴だ」というレッテルを貼られかねないので要注意だ。
3 相手に喋らせる
コミュニケーションのもっとも重要な基本は、「相手の話を聴くこと」だ。
相手の話に耳を傾け、相槌をうちながらタイミングを見計らって目を合わせよう。
全く目を合わせないのはNGだが、目を合わせ過ぎると相手が怯む恐れがある。
司法試験受験時代、私より少し年下の女性の受験仲間がいた(予備校のゼミで一緒だった)。
彼女は、対面で話す時に全く目を逸らさなかった。
対抗上(笑)私も目を逸らさないように話していたが、とても疲れた。
後刻、同じく受験仲間の別の女性受験生が「Fさんの眼力ってハンパじゃないよね」と言っていたので、他の受験仲間も彼女の眼圧を感じていたようだ。
適度に目を合わせるのは好印象だが、眼圧を感じさせるのは行きすぎだ。
また、相手の言ったことを繰り返すのは、ラポールを築くための基本的なテクニックだ。
「先般、福岡に行ってねえ~」「ほう福岡ですか!」とか、「先般、鈴木さんの食事をしました」「○○会社の鈴木さんですね」というふうに。
ミラーリングもラポールを築くための古典的なテクニックだ。
相手と同じようなしぐさをすることをミラーリングという。
目の前に相手がいる時に有効な手法だ。相手が飲み物のグラスに手を付けたら自分もグラスに手を付けるというように、相手と同じ行動をする。
慣れると自然にできるようになるので、最初は意識してやってみよう。
4 別れ際の挨拶も重要だ
「本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いします」程度の挨拶を外す人はまずいない。
ところが、相手が食事代やお茶代を払ってくれた時、「ごちそうさまでした」が言えない人が意外に多いのに驚く。
たとえ先方から呼び出されたとしても、相手の会社の経費で落ちるコーヒー一杯だったとしても、勘定を持ってくれたことに対する感謝の一言は重要だ。
学生時代、食事の代金は男が支払うのが当然とばかりに「ごちそうさま」の一言が言えない女性が何人かいた。
身銭を切らされた私たち貧乏男子学生の間では「感謝知らずの女」というレッテルを貼られた。
社会人になって給料を貰うようになるとそれほどでもなくなったが、やはり「ごちそうさまでした」の一言があると大いに好印象だ。
5 相手と別れた後顔が合ったら会釈を忘れない
分かれて10メートル20メートル離れてから、偶然相手と顔が合う時がある。
軽くでいいのできちんと会釈しよう。
最後に印象が悪いとそれまでの努力が台無しになってしまうので、決して気を抜いてはいけない。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。