調達プロセスにおいて事前に候補者を選ぶのは不適切か

5月8日付の毎日新聞によると、

内閣府が今年度から5カ年で行う「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期事業で、研究開発課題の責任者を公募したにもかかわらず、実際は事前に候補者を決め、各課題の詳しい内容を伝えていた。

とのことだ。

この記事のタイトルは『公募研究、事前に「内定」応募仕込む』である。なんとなく「○○ありき」という言葉を彷彿とさせる。

この件について、そこに適正さを欠くものがあったかどうか現時点では分からないのでそれには言及しない。ただ、今回のケースではなく、あくまで一般論ではあるが、行政機関が業務委託を行うプロセスにおいて、事前にその候補者を選定することを即座に不適切とは言えない場合がある。

それは行政が業務委託先を選定する場合、その業務の性格や背景等によって、いくつかある選定方式の中からそれを選ぶ必要があるためである。本稿ではそのなかでも「プロポーザル方式」について触れていきたい。

まず、行政が業務委託先を決定する際に、その選定方法は大きく分けて「競争入札方式」と「随意契約」の2種類である。上記のプロポーザル方式とは「随意契約」の一形態だ。

会計法の規定によれば、“契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。”としている。(会計法 第29条)

随意契約には3方式があるが、以下ではその中の「公募型プロポーザル方式」と「指名型プロポーザル方式」について簡略的に説明する。

プロポーザル方式は、

当該業務の内容が技術的に高度なもの又は専門的な技術が要求されるものについて、技術提案書(プロポーザル)の提出を求め、技術的に最適な者を特定する手続であり、これを公募により行うものを公募型プロポーザル方式と言う。
(環境庁「国等の機関における契約方式の概要」より)

対して、指名型プロポーザル方式とは、「あらかじめ」複数の提案者を指名により選定し、当該指名業者から提案を受ける方式をいう。例えばその目的や性質、その専門性等から公募にする必要がないと思われるほど「競争に加わる者が少数である場合」にこの方式をとることがある。

現在、内閣府では、内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)プログラムディレクターを募集している。(※「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術」の課題担当)

これは、冒頭で記した戦略的イノベーション創造プログラムにおいて前回の公募で決定されなかった部門の課題担当者を再公募しているものだこの選考基準及び提出するべき小論文等の内容を見るとその経験・能力・実績等にはかなりの専門性が求められており、これに多数の応募があるとは考えにくい。
(※詳細は内閣府HPを確認)

以上から読み取れるのは、この一連の公募が「プロポーザル方式」そのものではないかという事だ。再度言うが本稿冒頭で触れた件について、それが適正だったかどうかに言及するつもりはない。しかし、この件について一つだけ言えるのは、内閣府の生川(いくかわ)浩史官房審議官の発言とされる「補正予算で急きょ事業継続が決まり、PDを選ぶ時間が限られていたため、(事前選定と公募を併用する)ハイブリッドのやり方をした。」との言葉はまさしくプロポーザル方式(公募型、指名型)の定義通りではないだろうか。

だからといってそれが一連の疑惑を払しょくするものではない。プロポーザル方式が随意契約である以上その運用については、丁寧の上にも丁寧を重ねた「情報公開がなされていたか」は常に追求されなければならないのだ。