週刊誌は治療中の人をパパラッチしないで欲しい

田中 紀子

今日は、実にいやな記事を見てしまいました。

週刊誌が、元TOKIOの山口達也さんが治療している病院の写真をぼかしを入れて掲載し、その病院関係者の話として、山口さんがどんな病棟にいるか掲載しているんですね。また、他の雑誌では、「捜査関係者の話」というものを載せている所もありました。

こういうのってどこまで信ぴょう性あるんでしょうね~。
週刊誌にべらべら話す、病院関係者や捜査関係者って、本当にいるのでしょうか?
少なくとも私の周りでは、そんな人みたことないですが。

依存症の治療と言えば、アメリカの回復施設には、アルコール依存症をカミングアウトした、フォード元大統領夫人が建てた、ベティフォードセンターなど有名な所がいくつかありますが、そのベティフォードセンターの元カウンセラーが知り合いなので、彼に施設を案内して貰ったことがあるんです。

その時に聞いた話では、そこの施設には当然にアメリカのセレブが入所してくるわけですね。
そうするとマスコミがなんとか取材しようと躍起になり、中には「写真を撮ってくれたら200万円払う・・・」なんて大金を提示してきたりするんだそうです。けれども甘言にのって、一言でも職員が内情を漏らした場合は、その職員は速攻で解雇されるそうです。
日本もそうあって欲しいですよね。

小林麻央さんがガンで入院されてた際も、パパラッチが追いかけてくるので、報道自粛をご主人の海老蔵さんが呼びかけていらっしゃいましたけど、
ホント病気の人にはゆっくり静養して欲しいですよね。現在治療中の山口さんのことも、パパラッチするのは止めて頂きたいです。

まして依存症治療に対する誤解を招きかねないような、おどろおどろしい事を書いて、今、悩んでる当事者や家族が治療に向き合う気持ちが、阻害されないようにして欲しいです。

今回の記事でも、閉鎖病棟のことなどがことさら誇張して書かれていましたけど、今どき、よほどのことがない限り、閉鎖病棟に閉じ込められたりしないです。

案外、女性週刊誌ってエグい書き方するんですよね。
何度か取材されたことがあるから分かるんですけど、「何故こんなに誇張した書き方なんだろう」と憤った経験があり、その後はそういう週刊誌の取材は受けないようにしています。

また、依存症の治療には、「自分と向き合う時間」というのがとても大切です。
周囲の騒音を気にしながら、自分の振り返りなんかできません。

一般の人達が思うよりずっと、依存症からの回復プログラムというのは、自分に厳しいものなんです。
絶対的な正直さというものが求めらます。それなのに、周囲からとやかく騒がれてたら、正直になろう・・・なんて気持ちになれないですよね。
プログラムに取り組めなければ、依存症者は死ぬしかありません。

どうか、治療に入った山口さんには、静かな環境を提供してあげて下さい。
あとから続く、依存症者の勇気を奪わないためにも、切実にお願い致します。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年5月10日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。