「不満を持つあなたの顧客は、学びの宝庫である(Your most unhappy customers are your greatest source of learning)」
マイクロソフト元共同創業者で会長や最高経営責任者(CEO)を務めた、ビル・ゲイツ氏の言葉です。今でこそ第一線から退き慈善活動にいそしんでいますがゲイツ氏、マイクロソフトを立ち上げてしばらくは寝食を忘れて週末も仕事に没頭したといいます。夏休みなんて言葉は、辞書にあるはずもなく。そんな彼の仕事ぶりは従業員にも影響が及び、長時間労働が常態化していきました。
ゲイツ氏自身、従業員1人1人の働きぶりをよ〜く理解していたといいます。なぜなら、従業員全員の自動車のナンバープレートを全て記憶していたから。共同創業者で”マイクロソフト(microcomputer + software)”の名付け親であるポール・アレン氏が、「ストレスだらけの環境だった」と振り返るはずです。4日間で81時間も働きプロジェクトを完了したばかりの従業員に、ゲイツ氏は悪気なく「明日は何をする?」と尋ねたこともあったのだとか。現代ならブラック企業どころじゃありません。
マイクロソフトの時価総額が7,000億ドルを突破し、ゲイツ氏が世界の長者番付のトップ3常連であるなど、過去の血のにじむ努力が大いに実を結んだことは間違いないでしょう。しかしながら、同じマイクロでもマイクロマネジメントは従業員の士気を損ないかねません。
人事関連調査会社コンパラブリーによれば、IT企業に勤める2,248人のうち39%が「マイクロマネジメント」を最悪な上司の属性に挙げました。
男女別でみると、「マイクロマネジメント」を問題視する男性が44%に対し、女性は32%と10%ポイント近く下回っていました。女性は男性よりきめ細やかな部分があり、「マイクロマネジメント」の耐性への共感力が強いのでしょう。
上司と部下、人間同士ですから信頼関係の裏側で不満がくすぶることもありますよね。そういえば、今年から日本企業に勤務し始めたニューヨーク出身の友人が「マイクロマネジメントだ!」として打刻システムに怒り心頭でした。クリエイティブ系の仕事なせいか、業界1、2位を争う大手企業に勤務していても、NYでは自己申告制だったためです。日米の法整備の違いも一因なのでしょうけど、「マイクロマネジメント」の捉え方も様々ですから、皆がハッピーな状況形成は難しいですよね。
ゲイツ氏の名言に基づけば、不満を持つ顧客とのコミュニケーションが重要とされます。上司と部下の関係も同様で、互いの考え方の違いを埋めることで歩み寄りが実現するのかもしれません。
なお日本では5月病という言葉があり、ゴールデンウィーク明けに発症するケースが多いためこう呼ばれていますよね。アメリカをはじめ英国などでは、その1ヵ月前である4月を“ストレス意識向上月間”と位置づけています。コンパラブリーの調査も、4月を意識して発表されたのでしょう。
(カバー写真:Doctor Popular/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年5月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。