カシオ計算機は、1995年に世界で初めて消費者向けデジタルカメラ「QV-10」を発売したデジカメ業界のパイオニアである。そのカシオがデジカメからの撤退を発表した。決算発表時の説明資料によると、デジカは市場が大幅に縮小し2018年3月期の売上は123億円で対前年-34%、赤字49億円を記録したという。
連休中に小旅行に出かけたが、見かけた行楽客の多くはスマートフォンで写真を撮影し、デジカメを持つ客はほとんどいなかった。
カメラ映像機器工業会の統計によると2017年のデジカメ出荷台数は合計で2509万台、うちコンパクトは1339万台、一眼レフが758万台、ミラーレスが412万台だった。10年前の2007年には合計1億98万台、このうちコンパクトは9343万台、一眼レフは755万台だった。この10年間に市場規模は大幅に縮小したことがわかる。
ビデオカメラを使う行楽客も見かけなかった。電子情報技術産業協会の統計によれば、2007年の国内出荷台数135万台が、2017年には77万台にまで減っている。デジタルカメラは写真もビデオも撮影できるが、スマートフォンも同様である。スマートフォンさえあれば他に何も持ち歩く必要がないのだから、ビデオカメラやデジタルカメラは捨てられて当然である。
一方、SankeiBizは『カメラ業界、ミラーレスで反転攻勢 交換レンズの課題解消「一眼レフひっくり返す」』という記事を先日掲載した。記事には「スマートフォンに押され、苦境続きだったカメラ業界が息を吹き返すかもしれない。」「カメラ不況を吹き飛ばす“神風”の到来となるのか。各社ともミラーレスシフトを強め、反転攻勢ののろしを上げた。」とあった。
ミラーレスなどの高級カメラは画像が美しい。SankeiBizの記事には「美しい写真を見せたいという“インスタ映え”を意識するユーザーの増加がありそうだ。スマホに飽き足らないユーザーが一眼レフ並みの画質が得られる上、軽量コンパクトで扱いやすいミラーレスに乗り換えつつある。」とあるが、本当だろうか。
デジタルカメラが消滅しつつあると見なせばカシオのように撤退という決断になる。ミラーレスに希望があると判断すれば反転攻勢すればよい。僕は長期的にはカシオのほうが正しいと思う。行楽地では小さな子供たちが親のスマートフォンで写真を撮っていた。スマートフォンで写真を撮る習慣を身に付けた子供たちが大きくなるころまで、カメラという別の機械で撮影する画像記録方法が残るとは思えない。それにつけても元祖カシオの撤退は残念である。