精神科医が主催する亀山社中?出版したい人に朗報か!

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写真は講演中の樺沢医師。


(公社)全国出版協会によると、2017年の出版市場は、紙+電子で4.2%減の1兆5,916億円、紙は6.9%減、電子は16.0%増であることが明らかになった。市場のピークとされる、1996年の2兆6,563億円から約6割に落ち込んだことを意味している。しかし、出版不況といわれながらも出版には根強い人気があり、出版希望者は増えている。

とくにビジネスを指南するビジネス書の市場は活性化している。サラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなどプレゼンスの高さに注目が集まっているのである。今回は、精神科医、作家として活動をされている、樺沢紫苑医師(以下、樺沢医師)に、一般の人が出版にこぎ着けるためのヒントについて伺った。

現代版の「亀山社中」を目指す

筆者も、10冊ほど出版実績があることから、出版業界に関しては多少覚えがある。最近問題になるのが、「出版プロデューサー」。出版業界に顔がきくから出版業界関係者が圧倒的に多い。また売れなくなった著者も「出版プロデューサー」になる傾向が高い。出版希望者にはどのようにして適切なルートを見極めるべきなのだろうか。

樺沢医師は「ウェブ心理塾」という講師、著者を目指す勉強会を主催している。海援隊の「亀山社中」をイメージしてもらいたい。亀山社中は貿易や交易の仲介、物資の運搬等で利益をあげながら、海軍、航海術の習得に努め国事に奔走した。これの現代版である。意識の高い社会人にとって有益な情報を提供する「場」と考えてもらいたい。

「もしあなたが、本気で出版したいと考えるのなら、『最短2ヶ月で出版決定』することができます。それは、出版プロデューサーに頼む、ということではありません。出版プロデューサーに頼むと、100~300万円くらいかかります。ウェブ心理塾は、すでに200人の仲間がいますが、樺沢の本が、毎回、ベストセラーになるのは、ウェブ心理塾の仲間が応援してくれるからです。『仲間』の力は、とてつもなく大きなものです。」(樺沢医師)

「樺沢が主催する講師、著者を目指す勉強会『ウェブ心理塾』。そのウェブ心理塾の年間、最大のイベントが『出版企画書コンペ』なのです。この出版企画書コンペは、過去4回開催されており、毎年10人以上の塾生が出版のチャンスを勝ち取っています。」(同)

具体的に流れを説明したい。応募者は「出版企画書コンペ」に出版企画書を提出する。応募者の中から現役編集者3名による予備審査があり、予備審査を突破した15人が決勝戦に進出。大手出版社10名以上の編集者の前で、自分の企画書のプレゼンをするというもの。イメージは、かつて放送されていた「スター誕生」に近い。

「過去の参加出版社を例に挙げると、サンマーク出版、ダイヤモンド社、大和書房、東洋経済、ソーテック社、あさ出版、明日香出版社、集英社、総合法令出版、学研、主婦と生活社、ぶんか社、KADOKAWA中経出版など、ビジネス書の大手出版社が勢揃いします。過去4回のコンペでは、毎回10名を超えるウェブ心理塾生が、『出版内定』をいただいています。高い確率で出版が決まるイベントになっています。」(樺沢医師)

「もし、決勝に進出できない場合も、懇親会にて、参加している編集者と名刺交換が可能で、そこから出版につながるケースも多数あります。『出版企画書コンペ』に参加すれば、『たった2ヶ月で出版が決まる!』ことは、十分にありえるのです。」(同)

実は、筆者も「出版企画書コンペ」に参加したことがある。出版を目的としたコンペはいくつかあるが良心的なコンペであることを申し上げておきたい。多数の出版社の前でプレゼンする機会は貴重である。とはいえ、本になる企画の練り方、企画書の書き方、それらをきちんと勉強して、企画書コンペに勝ち抜く企画書を書けないといけない。

そのため希望者には、アゴラ出版道場でも講師をつとめている、城村典子さんと、大手出版社の現役編集者が勉強会を開催している。今年の「出版企画書コンペ」は、7月に開催される。興味のある方は情報収集をしてみてはいかがだろうか。

ある出版プロデューサーの話

数年前、業界では著名な「出版プロデューサー」に会う機会があった。仮にA氏としよう。元々はコンサルタントらしいのだが専門領域が不明だ。次のようなやり取りをした。

「どちらのファームご出身ですか?」(尾藤)
「ファーム?私は2軍ではないので」(A氏)
「いや、野球のファームではなく、コンサルファームのことです」(尾藤)
「イエス!野球チームのコンサルのことですね。お任せください!」(A氏)
「そうではなくて。どちらのファーム出身かと思いまして」(尾藤)
「WOW!東北のほうです。あちらのファームはいいですね!!」(A氏)
「・・・」(尾藤)

本人は、一流のコンサルタントを標榜しているが微妙だと感じた。育てた著者も多いとの話だったが詳細は不明だ。その後、A氏の出版塾出身といわれる方の出版が決まった。仮に山田さんとしておこう。しかし、山田さんの本は売れなかった。数ヵ月後、山田さんは「出版プロデューサー」になっていた。見事に転身したのである。

冷静に考えれば、売れない著者のプロデュースで出版が実現できるとは思えない。自分が出版できないから出版プロデューサーになるという姿勢もよろしくない。それでも、出版希望者は大勢いるから、情報が乏しい人に「出版させてあげるよ!」なんて甘い言葉をかけて、お金を搾取する人が増えてくる。選択する側が賢くならないといけない。

いまの時代は、出版しても売れる保証は無いから出版社の判断も早い。重版率は1~2割程度だ。人から応援されるネットワーク形成も必要になる。私がいずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれない。

尾藤克之
コラムニスト