犯罪被害者の権利確立に尽力:あすの会が6月3日に解散へ

上川法相に「再犯防止推進計画検討会宛要望書」を提出する「あすの会」(公式サイトより:編集部)

あすの会という名称を聞いてそれが「全国犯罪被害者の会」だとお分かりの方は、刑事司法に相当通じた方だろうと思う。

「18年前の200年1月23日、80人定員の会場に200人を超える被害者などが集まった。次々と立ち上がって訴える被害者の声は悲惨を極めた。被害者は操作や裁判では証拠品として使い捨てにされ、社会からは偏見の目で見られ、どこからも支援がない。国から出る見舞金のような犯給金もごく僅かで明日の生活にも事欠く。まるで日本国籍をもたない難民のようだった。あすの会は、この日に設立された。国だけを当てにせず、我々自身の手で、被害者の権利と保証制度を確立しようと立ち上がったのだ。」

あすの会の創設者で、現在あすの会の顧問である岡村勲弁護士が「解散に寄せて~仲間への心からの感謝と誇りとともに」という文書の中でそう書かれている。

「それから18年間、犯罪被害者等基本法の成立を始め、犯罪被害者の権利やもろもろの制度を勝ち取った。今では、被害者は起訴状が貰え、公判記録の閲覧、謄写もでき、裁判では検察官の隣に座って加害者に直接質問もできる。国の費用で弁護士も付けられる。被害者が裁判所に行く旅費、日当も出るし、殺人犯の公訴時効も廃止されて、逃げ得は許されないことになった。」

あすの会が18年間に勝ち取った成果の数々が簡潔に述べられている。

「また、『刑事裁判は被害者のためのものではなく、公の秩序維持のためだ」という最高裁判所の判決も『犯罪被害者等基本計画』で、『刑事裁判は被害者の為にもある』と改められた。これらの制度改革は、加害者のことしか眼にない日弁連の猛烈な反対にあった。あすの会と日弁連の戦いだった。あすの会がなかったら、50年経っても、いや100年経っても、実現しなかっただろう。」

岡村弁護士の一言一言に魂魄が宿っている。

15日、そのあすの会の岡村弁護士と会食した。
犯罪被害者等基本法の制定や各種の犯罪被害者施策の推進に多少なりとも貢献してきたことに対する感謝のための宴だということだった。

偶々私は東京弁護士会の副会長から自民党の衆議院議員に転進した時に、あすの会と出会い、犯罪被害者等基本法の制定に関与することになった。私が、刑事司法の歴史にほんの少しだけ足跡を残すことが出来たのは、すべてあすの会と岡村弁護士のお蔭だと思っている。

あすの会がなければ、そして岡村弁護士がいなければ、絶対に犯罪被害者等基本法の成立も犯罪被害者施策の推進もなかったはずである。

そのあすの会が、いよいよ6月3日をもって解散する。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。