ドル円は110円の壁を、米長期金利は3%の節目を抜けてきた。日本国債への影響は?

5月15日の米国市場では、米10年債利回り(以下、米長期金利)は一時3.09%と2011年7月以来の水準に上昇し、3%の壁を上抜けた。15日に発表された4月の米小売売上高は前月比0.3%増えたことが要因とされたが、数字は予想通りであり、それほどインパクトのあるものではない。すでに15日の東京時間で米債は売られており、3%という水準を試すような動きとなっていたことで、節目の3%を抜いてテクニカル的に米債売りを誘うような動きと言えた。16日に米長期金利は一時3.10%まで上昇した。

米長期金利の上昇要因としては、もうひとつ原油価格の上昇もあった。イランを巡る中東情勢が不透明感を強めなか、15日の原油先物市場でWTI先物6月限は35セント高の71.31ドルとなった。こちらも70ドルが目先の節目となっていたが、ここを抜いてサウジアラビアの目標ともされる80ドルへの上昇の可能性も見えてきた。16日のWTI先物6月限は18セント高の71.49ドルとなった。

15日の米国株式市場は米長期金利の上昇を嫌気して売られたとされるが、この解釈も難しいところがある。地合が良いときには、これまで米長期金利が上昇すると金融機関の業績改善が意識されて銀行株など買われ、買い材料ともなっていた。3%という水準を上回ると想定外との面もあるのか、米国株式市場はやや警戒して売られた面はある。しかし、米長期金利上昇の背景には米国経済の拡大とそれによるFRBの利上げがある。一概に売り要因とは言えない面もあり、ダウ平均は14日まで8連騰となっていただけに、調整売りも入りやすかった面もあるのではなかろうか。実際に16日の米国株式市場では、米長期金利がさらに上昇したものの、ダウ平均は反発し62ドル高、ナスダックも46ポイントの上昇となっていた。

米長期金利の上昇によって外為市場では、これも大きく節目とされたドル円の110円を突破してきた。直近でも一時的に110円を超す場面はあったが、すぐに押し戻されていた。しかし、15日には110円半ばまで上昇したことで目先の壁となっていた110円を破ってきた。これにより次のターゲットは113円近辺となり、ドル円は上昇トレンドが再開するものと思われる。ただし、北朝鮮が米朝首脳会談の中止を警告するなどしたことで、リスク回避の円買いも入り、ドル円の上昇基調はいったんブレーキが掛かっている。

米長期金利、原油先物そしてドル円とそれぞれ節目、ターゲットとみられていた水準を抜いてきた。これらは円債にとっては本来であれば売り要因ともなる。円債は米債に連動しやすく、原油価格の上昇は物価の上昇要因となり、円安も同様である。16日の債券先物は売られたものの、150円60銭台と大きく崩れたわけではない。円債の下値が限られる背景にあるのが、日銀による国債の大量買入とイールドカーブコントロールである。しかし、今後は次第にファンダメンタルズや海外の金利動向との乖離が大きくなってくる可能性がある。その際に生じる歪みが、何らかの影響を円債市場に与える可能性も出てくるかもしれないので注意も必要になりそうである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年5月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。