「開いた口が塞がらない」
26日の2回目の南北首脳会談を受けて、27日午前に文在寅大統領は記者会見を開いた。この記者会見を聞いて、多くの人が呆れたことだろう。
外国メディアの記者が文大統領に「北朝鮮の非核化の意思は疑いがないとする根拠は何か」、また「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)について、北朝鮮から具体的な言及があったのか?」と問い質した。
これに対し、文大統領は明確な返答を避けながら、こう答えた。「非核化の具体的な事案については、米朝の間で話合われること。自分は発言すべきではない」
まったく呆れた。ここが、一番大事なところであるにも関わらず、その話を何ら詰め切れておらず、また、米朝の仲介役を自任する韓国として、問題の核心を担うという責任感も使命感もない。こんな丸投げ発言を臆面もなく言い放つくらいならば、そもそも、仲介役を自ら買って出て、首脳会談の提案をアメリカにするべきではない。外交上、何の力のない者がこんな火遊びをするというのは危険なことだ。
何のための南北首脳会談なのか?
文大統領はたとえ何の力もないとしても、自分が提案したことに、最後まで責任を持って、北朝鮮から具体的な非核化のプロセスについての約束を引き出す努力をするべきだ。その具体的な約束もなく、22日、わざわざアメリカにまで行って、「非核化の意思は疑いない」などという漠然とした話を繰り返すから、トランプ政権の面々も文大統領にこの上ない不信感を募らせたのだ。
26日の第2回目の南北首脳会談をおこなっても、文大統領は金委員長から、何の約束も引き出せない。いったい何をしに、板門店に赴いたのか。また、何を説得したというのか。文大統領は27日の会見でも「非核化の見返りとして、北朝鮮の体制保証が必要だ」ということを強調している。彼が仲介者ではなく、代弁者であるのは明白だ。文大統領は余計なことばかりして、事態を悪化させている。
中国の介入の度合いは?
今、トランプ政権が最も注視している点は中国の動向であろう。トランプ大統領は22日、以下のように述べた。
「金委員長が習主席と2回目の会談をしてから、態度が少し変わった。気に入らない」
トランプ大統領は中国の北朝鮮に対する影響力の度合いを見極めるために、わざと中国を名指しして見せた(トランプ大統領は金・習両氏が会ってから、態度が変わったなどとは思っていない)。中国が北朝鮮に、どのような働きかけをするか(していたか)、ここが、アメリカにとっての重要な見極めのポイントだったはずだ。
そして、北朝鮮はペンス副大統領を罵倒するに到った。アメリカとしては、これをもって、中国の北朝鮮への介入が無視できない程、急激に強まっていると判断したに違いない。それ故、中国介入が疑われる状況での話し合いを拒絶するという、アメリカの明確な意思が24日の会談中止表明で示された。
アメリカはなぜ、再び応じるのか?
トランプ大統領の会談中止表明は中国に対する最大限の警告として、効果があった。会談中止の発表直後、異例の早さで(24日23:56)、中国の「環球時報」が「信義にもとる行為」などと言って、トランプ大統領を激しく批判する記事を掲載した。今まで、表向き澄ました顔をしながら、裏で策動していた中国がハッキリ、怒りと動揺を露にしたのだ。これこそ、アメリカの警告が中国に強く刺さっている証拠である。
また、「環球時報」の同記事内では、以下のような重要なことが書かれている「米朝が最悪の方向へ向かうことを避ける努力を続けてほしい」、「アメリカが北朝鮮に対する軍事的圧力を高めないことを望む」。これは中国のアメリカに対する事実上の降伏と見える。
アメリカはこうした中国の出方を見て、中国を一定のレベルで、牽制することができるとの手応えを得たはずだ。だからこそ、再び、6月12日の米朝首脳会談に応ずると発表したのだ。アメリカにとって、北朝鮮の裏にいる中国の存在が最も意識されるべき重要な要因であることは言うまでもない。
中国に後始末をつけさせるべき
金委員長は24日のトランプ大統領の書簡に対し、未だ正式な返答をしていない(27日午後現在)。外交上、こんな非礼はない。金委員長が直接、トランプ大統領に語りかけるのではなく、文在寅に仲介を頼んだということは、まだまだ、アメリカに対し、一悶着起こす気があるということだ。
そもそも、今、文大統領の出る幕ではない。文政権の中に、本当に外交技術を理解している人間がいるならば、「中国に後始末をつけさせるべきだ」と進言するだろう。裏で策動している中国を、表に引きずり出す絶好のチャンスでもあり、金委員長にもそのように働きかけて、中国に責任を押し付ければ、物事はうまくいく。今、文大統領自身がシャシャり出て、何も得をすることはない。
文政権の外交・安全保障の司令塔である国家安保室長の鄭義溶(チョン・ウィヨン)氏は外務官僚出身であるが、通商交渉の専門家だ。外交部長官の康京和(カン・ギョンファ)氏も、人権をライフワークに国連外交を担当してきた非正規の外交官だ。文政権には、プロの外交官がいない。
中国と北朝鮮は、「文在寅を間に挟んで利用すべし」との作戦を共有しているはずだ。中国が文在寅を盾に出して、アメリカの様子を見ようとしているのは明白だ。愚かな文大統領はその作戦にまんまと引っ掛かかり、26日、ご苦労なことにわざわざ板門店まで出掛けていったのだ。韓国人は文大統領が国益を著しく損ねる大統領であるということを自覚した方がよい。