フォルクスワーゲングループが圧縮天然ガス車の開発に積極的

EL PAISより引用

日本ではイマイチ進展の期待が薄い天然ガス自動車であるが、ヨーロッパでは大ヒットしたディーゼル車に代わるクリーンな車として成長が期待されている。また、電気自動車が普及することは確かであるとしても、まだその為には時間がかかる。一方の天然ガス自動車は消費者が希望すれば今すぐ入手できる体制になっている。

トヨタの最大のライバルフォルクスワーゲンは傘下の1社で1000人の開発チームを抱えるスペイン自動車メーカー「セアット(SEAT)」にその開発を一任している。

セアットは液化天然ガス(LNG)ではなく、圧縮天然ガス(CNG)を燃料にし、同時にガソリンも使用可能なバイフューエル車の開発を進めている。これは、CNGサービスステーションがまだヨーロッパ全域で十分に普及していないのが理由で、それを補う意味で従来のガソリンスタンドでガソリンも給油できるということにしているわけである。

フォルクスワーゲングループのCNG開発の信頼を受けたセアットのCEOルカ・デ・メオ氏は4月にマドリードで開催された第6回Gasnam(天然ガス利用の為のイベリア協会)の会議の席で、フォルクスワーゲングループの全ての車種に採用されるCNGについて同氏は言及して、「これがMade in Spainのテクノロジーと認められるようになることを望み、そのパイオニアとなることを希望し、そうなることを確信している」と述べて所信を表明をした。

セアットはフランコ独裁時代に1950年に国策で誕生した自動車メーカーで、その後フィアットとが出資していたが、1982年にフォルクスワーゲンと業務提携してその傘下に入った。小型車がメインで、車種イビザ(IBIZA)は現在第5世代、33年続いている。現在、セアットはスペインGDPの1%を担う重要な企業であるということを先ず読者に知っておいてもらいたい。

CNGを燃料にした自動車はクリーンで自然環境保全にはガソリン車やディーゼル車と比較して有害物質の大気への放出が非常に少ない。二酸化炭素(CO2)は30%低減し、窒素酸化物(NOx)は85%まで低減できる。そして、燃費はCNG車の場合に100キロ走行するのにおよそ3.2ユーロ(416円)、ディーゼル車だと4.4ユーロ(572円)、ガソリン車だと5.8ユーロ(754円)という出費となって、燃費が非常に安い。

スペインでCNG車が100万台増えれば大気圏に120万トンのCO2を放出することを防止することになるとされている。

環境保全という意味でスペイン政府は天然ガス自動車の普及に力を入れており、LNG車の場合は購入の際に1500から2000ユーロの割引、GNC車の場合は同様に3500ユーロが差し引かれることにして購入者の負担を軽減している。それを政府が負担することにしてカーディーラの販売促進に協力している。ちなみに、イビザ1.0TGI、90馬力の価格は1万5000ユーロ(195万円)前後である。

その販売促進効果もあってか、今年第一四半期はCNG車は900台以上の販売を記録し、それは2017年に販売された総台数にほぼ匹敵する数量であるとされている。

勿論、その中でも販売台数においてトップはセアット社のレオン1.4TGIである。その後、オペル・コルサ、フィアット・ティーポ、フィアット・500、セアット・イビザなどが続いている。

スペインの場合、唯一の問題はCNGのサービス・ステーションがまだ十分に普及していないことである。この面で、一番普及しているのはドイツとイタリアで、両国ともそれぞれ1000カ所存在している。イタリアの場合は2020年までに2000カ所まで普及させる予定だという。スペインの場合は現在まで120カ所程度しかなく、2020年までに300カ所まで増やすのが目標となっている。

スペインでのCNGササービス・ステーションの普及はさておいて、セアットは2020年までにスペインで2万台の販売を達成することを目標にしている。また、セアットは天然ガスの産出国であるアルジェリアでのCNG車の生産を本格的に進めることになっている。

現在、スペインでは2800万台の車が走行しているが、CNG車は6000台である。2016年と比較して、昨年のCNG車は133%の増加をしている。