5月25日のニューヨーク原油先物市場では、主要産油国のサウジアラビアとロシアのエネルギー担当相が協調減産の緩和を巡り協議したことが伝わったことから、WTI先物の7月限は前日比2.83ドル安の67.88ドルと急落した。また、29日にはイタリアの政局への警戒などからのリスク回避の動きを強めたこともあり、WTI先物7月限は1.15ドル安の66.73ドルと大幅続落となった。
WTI先物は21日に72ドル台に乗せ、約3年半ぶりの高値をつけたが、これは米国によるイラン制裁再開に加え、米国がベネズエラに対し制裁を発動する確率が高まったとの観測も影響した。イランもベネズエラも主要な産油国であり、これにより供給が減少し、原油価格の上昇が意識された。
これに対して、サウジアラビアとロシアが協調減産の緩和を巡り協議したのは、あくまで部分的緩和によって、原油価格の急騰を回避するためであり、これまで原油価格の上昇を促していた協調減産の方針を変えるわけではない。
ここにきての原油先物価格をみると、今年2月あたりから上昇トレンドを形成していた。原油価格の上昇の背景には、価格下落を危惧した石油輸出国機構(OPEC)諸国とロシアなどが昨年初めから協調して減産したことによる影響が大きい。
サウジアラビアの政府高官は、原油価格について「サウジアラビアには上昇を止める意向は一切ない」と発言しているようだが、サウジアラビアは今年、原油価格を少なくとも1バレル80ドルに押し上げようとしているとされる。この方針にも変化はないとみられる。
しかし、WTIのチャートをみると久しぶりの大きな調整が入った格好となっている。ここで上昇トレンドが終了したかどうかは今後の動向次第とはなるが、ひとまずWTIでは70ドル台乗せ、北海ブレント原油価格が2014年以来初めて80ドルに上昇したこともあり、目先の達成感のようなものも出てきいる。
サウジアラビアもロシアも原油価格の緩やかな引き上げを引き続き望んでいることも確かであり、余程の事態が生じなければ、再び上昇トレンドを形成する可能性は高いとみている。ただし、原油価格の上昇には世界的な景気拡大も背景にある。イタリアやスペインの政局の先行き不透明感も手伝い、ユーロ圏の景気減速への懸念なども出ていることから、このあたりでいったんピークアウトする可能性もないわけではない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年5月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。