書評『防衛大流 最強のリーダー』

小林 武史
濱潟 好古
幻冬舎
2017-12-20

 

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」。

山本五十六の残した言葉は、しばしば上に立つ者への教訓として引用される。リーダーシップ論が花盛りの昨今、ことさら私の目を引いたのが、山本の言葉を範とする本書である。

防大に、何か特別な論理が存在するわけではない。例えば、部下に指導する際の注意点として「伝えると伝わるは違う」ことを、学生時代の指導教官とのトラブルを例に力説する。指導教官からの指示で休暇前の行動計画表を提出したが、「書き方が悪い」、「もっと早く提出すべき」と叱られた。

しかし、双方が主観で判断したため、記入方法も提出時期も認識はバラバラだった。一連のやりとりを聞いていた上官は、指導教官に「伝えると伝わるは違う」と諭した。この一言で事なきを得た著者は、リーダーには伝達力が必須であることを身に染みて学んだという。

リーダーシップは先天的なものではない。「時間一つ守れない社員がいれば、納期一つ守れない会社になる」ことを説明するために、著者は自分の何気ない行為が連帯責任として仲間に迷惑をかけ、強烈な罪悪感から涙を流した経験を例に出す。自らの失敗を恥ずかしげもなく披露することで、訓練すればリーダーシップは誰でも習得できると身をもって示しているのだ。

昨年10月、防大の開校祭を見学した。「防大を世界一の士官学校にする!」と宣言した、学校長の挨拶が忘れられない。防大が世界一の「リーダー養成校」となれば、その4年間の学生生活で身につける指揮官としての素養は、すなわち世界一のリーダーシップを意味する。

だが、繰り返しになるが、防大は何か特別な教育を施しているわけではない。冒頭に著者が示している防大3大ルールの「ウソをつくな、言い訳するな、仲間を売るな」にあるように、そこで代々受け継がれている申し送り事項は、リーダーシップを磨く上での王道なのである。

小林 武史 国会議員秘書