5月30日、党首討論が行われた。安倍首相対野党4党党首の対決が約1年半ぶりに行われたのだ。
まずは立憲民主党代表の枝野幸男さんが、森友問題について発言をした。昭恵夫人付きの政府職員の介入があったと指摘したのだ。
安倍晋三首相は昨年2月、森友問題が発覚した際、「私や妻が関わっていたら首相を辞任する」と国会で答弁している。ところが安倍首相は、5月28日の国会で「贈収賄に当たらないから問題がない」と答えた。つまり「辞めない」という趣旨の発言をしたのだ。枝野代表はこれを批判した。ところが安倍首相は、ごまかしの答弁に終始した。
一方、前回書いたように、「加計問題」も虚偽の連鎖となった。たとえば、愛媛県側の文書に記録されていた、2015年2月25日の安倍首相と加計孝太郎理事長との面談についてだ。これを、加計学園側は「間違いだ」と発表したのだ。
これが本当だとしたら、加計学園が首相の名前を利用したことになる。だから枝野さんは、「安倍さん個人は怒らなくても結構だが、内閣総理大臣としては『しっかり説明してもらわなきゃ困る』と言わなければおかしい」と迫っている。これに対して安倍首相は、国家戦略特区制度への持論を述べることで押し通した。
党首討論の時間は、4党でたったの45分間だ。もっとも長い時間を割り当てられたのは立憲民主党。それでもたったの19分間である。しかも答弁時間も含む19分なのだ。だから、この日の安倍首相の、はぐらかすような答弁は、「時間稼ぎ」と批判されても当然だ。
見ている側としても、実に消化不良だった。討論のあり方についての見直しも必要だろう。
本来、自民党には「主流」と「反主流」が存在していた。主流は首相サイドだ。そして反主流が、党内で野党と同じ働きをする。こうして、自民党は自浄作用を確保し、長期にわたって政権を維持してきたのだ。岸信介さん、田中角栄さん、福田赳夫さん、そして宮澤喜一さん。彼ら首相を辞任に追い込んだのは、すべて自民党自身だった。
ところが1994年の法改正で、衆議院議員選挙は小選挙区制に変わった。これにより、「バスに乗り遅れるな」という風潮が強くなった。それぞれの議員が自らの落選を、恐れるようになってしまったのだ。
こうして現在、自民党は「主流」のみで構成されるに至った。いまや安倍首相のイエスマン揃いだ。反主流という党内野党がいることで保ってきた、自民党の「自由」も「民主」も失われた。自民党は劣化したのだ。
だが、一連の安倍首相の言動には、野党のみならず、自民党内からもさすがに批判が出ている。このような状況で、次の総裁選はどうなるか、安倍首相の3選はあるのか。
石破茂さんは、おそらく次の総裁選に出馬するだろう。2012年の総裁選では、1回目の投票で石破さんがもっとも票をとった。議員票では負けていたが、党員票では安倍さんを上回っていたのだ。最近の世論調査でも、石破さんの人気は高い。勝つ可能性は十分にある、と僕は思っている。
次の総裁選のキーマンは、石破さんになるだろう。だが、それ以上に僕が注目している人間がいる。小泉進次郎さんだ。2012年の総裁選で、小泉さんは安倍首相ではなく石破さんに投票している。
小泉さんは、国民からの人気が非常に高い。そんな影響力ある小泉さんが石破さん側につけば、流れは変わるのではないか。自民党が、本来の自浄作用を復活させることもできる。僕は、それを期待したい。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2018年6月8日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。