6月14日に欧州中央銀行(ECB)は、金融政策を決める政策理事会において、資産を大量に買い入れる量的緩和政策を年内に終了することを決めた。
ECBの債券買入額は今年1月からそれまでの月600億ユーロから300億ユーロに減額し、債券買入は少なくとも今年9月末まで継続するとしていた。300億ユーロの買入は9月まで続け、10月から12月にかけては月間の資産買入額を150億ユーロに減らし、買入そのものは12月で停止することになる。
年内の資産買入については、フランス中銀総裁などが量的緩和策を年内に終了させる公算が大きいことが示唆されていた。ECBのプラート専務理事も14日のECB理事会において、資産買い入れ策を年内に終了させるかどうか討議すると述べていた。ただし、年末までまだ期間もあり、今回の会合でそれが正式に発表されるのかどうかが、ひとつの焦点となっていた。
市場はECBによる年内の資産買入停止をかなり織り込んできていたこともあり、ECBはこのタイミングで決定したとみられる。さらに次のステップとなり利上げの時期についての示唆があるのかどうかも、注目点となっていた。
これについてECBは、現在の超低金利が「少なくとも2019年夏までは現在の水準にとどまる」とした。つまり主要政策金利となるリファイナンス金利は、少なくとも来年の夏まではゼロ%のままとし、利上げはそれ以降になることを示した。
ECBはFRBとは異なり、正常化に向けた動きは極めて慎重である。このため、量的緩和政策の年内終了という正常化に向けたステップによる市場へ影響を軽減させるため、次のステップとなる利上げに向けては期間を置くこととし慎重姿勢を示した。さらに資産保有額は維持することも発表しており、これは国債の償還分についてはその分は買い入れることとなる。こういった正常化に向けての慎重姿勢は、イタリアの政治リスクや物価が目標を達成していないことも理由となろうが、市場に配慮していることも確かである。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年6月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。