6月12日の歴史的な米朝首脳会談を経て、政治面からみるとアジアのパワーバランスに大きな変化をもたらす可能性が出てきた。北朝鮮と中国、ロシアのこれまでのややベールに閉ざされていた関係に、韓国と米国も加わることによって、あらためて北朝鮮のベールが剥がされる可能性がある。ここに日本がどのような形で北朝鮮との関係を構築するのか、拉致問題という課題を抱えながら、日本政府にも大きな課題が与えられることになる。
金融市場ではリスク回避の巻き戻しというか、リスク選好型の動きが強まることが予想される。北朝鮮リスクが金融市場を萎縮させるほど影響していたわけではないものの、北朝鮮によるミサイル試射や核開発によって地政学的リスクが市場でもそれなりに織り込まれていたことも確かである。その巻き戻しも起きてこよう。さらに今後、北朝鮮がアジア経済にどのような影響を与えるのかというあらたな見方も必要となってくる。
いまさらながら米国と北朝鮮は冷戦状態にあったことを今回の日米首脳会談は気付かせてくれた。その状態が緩和されるとなれば、アジアは政治バランスだけでなく、経済バランスにも影響を与える可能性がありうる。米国と北朝鮮の緊張緩和により、北朝鮮への経済制裁も緩んでくることが予想される。北朝鮮と米国などとの貿易関係がどのようになっていくのかも不透明ながら、ネガティブな見方よりもポジティブな見方も今後、必要になってくるのではなかろうか。
そこに日本がどのようなかたちで関与しうるのか。霧に隠れていたマーケットが出てくる可能性もある。むろん北朝鮮の経済実態はかなり悪化しているとの見方もあることで、経済格差といった問題も露見するかもしれない。
これらは日本経済にも大きな影響与えかねず、それは金融市場にも当然ながら影響を与えることになる。株式市場がこれをポジティブに捉えれば、日経平均が3万円の大台に向けて上昇するきっかけとなる可能性もある。
金融市場でリスク選好ムードが強まり、FRBが着々と正常化を進め、ECBも正常化に向けた舵を切るとなれば、日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の行方にも微妙ながらも影響を与える可能性がある。むろん物価そのものが目標に向けて上昇しない限り、日銀にとっては現在の緩和策の修正は難しいのかもしれないが、リスク選考ムードの強まりによる為替や株の動向如何では、その修正も可能となるかもしれない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年6月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。